
名優の写真集・その3 『魁玉歌右衛門』
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九代目市川團十郎亡きあと、大正から昭和の歌舞伎界を統率していったのは、五代目中村歌右衛門でした。十代の頃から、天性の美貌を謳われスターの座にあった歌右衛門は、伊原青々園にもこの写真集の序文で、「女形ながら、演技の心構え、舞台に臨んだ意気は第二の團十郎」と言われている様に、確固とした信念と見識を持ってますます技芸を磨き、歌舞伎座の座頭格となり俳優協会の初代会長をも勤めました。 芸風もまた私生活も、品がよく貴族的な雰囲気のあった歌右衛門ですが、露店で九代目團十郎や五代目尾上菊五郎の写真が売られているのを見て、自分の写真が道端で売られるのはイヤだと思い、値段は張っても写真の台紙を豪華にしたブロマイドをわざわざ作らせ売らせました。ところが却ってこれが評判となり、よく売れたのだそうです。 歌右衛門は歌舞伎のいっそうの地位向上に努力を惜しまなかった人でもありますが、その記録保存のために演劇図書館の創設を考えていました。しかし、これは関東大震災で財政的にも行き詰まり、蒐集すべき資料、台本や写真の多くも焼失してしまったため断念せざるを得ませんでした。歌右衛門宅は土蔵が無事だったため、数千枚という数の写真が残りましたので、せめて自分の姿だけでも残したいものと写真集の出版を思いつき、安部豊に依頼しました。写真は選びに選び抜き、早世した息子の"慶ちゃん福助"こと五代目中村福助、養父で踊りの名人でもあった四代目中村芝翫の写真も探し求め、合わせて1227枚を27センチ×37センチ、222頁の一冊の写真集としました。 装丁は凝った重厚なもので、各界との付き合いも広かった歌右衛門に相応しいできばえです。タイトルにある"魁玉(かいぎょく)"は五代目歌右衛門の俳号です。 題簽(だいせん※):題を書いて表紙に張る紙片や布片 |
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文・飯塚美砂(財団法人松竹大谷図書館) |
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