魚づくし 

さかなづくし

 『義経千本桜 渡海屋の場』では、鎌倉方と名乗る相模五郎と入江丹蔵が現れて、義経主従を追うため船を出すようにと命じますが、そこへ戻ってきた銀平(実は平知盛)に追い返されてしまいます。この時、悔し紛れに二人が言い放つ負け惜しみが「魚づくし」になっていますが、これは原作の人形浄瑠璃にはなく、歌舞伎で独自に作られたせりふです。海をイメージするこの場面と歌舞伎ならではの洒落の効いたせりふが相俟って、一服の清涼剤のように客席を和ませます。
 
 歌舞伎には、「七五調」の名せりふや、長ぜりふを朗々と述べる「つらね」など、音楽性に富んだせりふ術がいろいろとありますが、この「魚づくし」や『京鹿子娘道成寺』の所化たちが口々に述べる「舞づくし」なども秀逸な趣向になっています。
ちょっと一節をご紹介しましょう。(上演の際は多少の異同があります)

『鰯(いわし)ておけば飯蛸(いいだこ)思い、鮫(さめ)ざめの鮟鱇(あんこう)雑言。いなだ鰤(ぶり)だと穴子(あなご)って、よくい鯛(たい)目刺(めざし)に鮑(あわび)たな』(⇒言わしておけばいいだろと思い、様々の悪口雑言。田舎武士だとあなどって、よくも痛い目にあわせたな)
『鯖(さば)浅利(あさり)ながら、鱈(たら)海鼠腸(このわた)に帰るというはに鯨(くじら)しい。せめてものはら伊勢海老(いせえび)に、このひと太刀魚(たちうお)をかまして槍烏賊(やりいか)』
(⇒さはさりながら、ただこのままに帰るというは憎たらしい。せめてもの腹いせに、このひと太刀をかましてやろうか)
(K)



解説

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