高野聖

こうやひじり

 生涯で300余の作品を残した泉鏡花。そのうち、戯曲として書かれたものは16作(7作は未上演)、劇化された小説は10数作になります。
『高野聖』は明治33年2月に発表された鏡花前期の名作とされる小説です。明治37年9月、本郷座で劇化され初演となりました。

 実はこのとき、鏡花は新派合同公演のために戯曲を書き下ろそうとしていたのですが、戯曲を書くのはこのときが初めてとあって、いろいろ戸惑うことが多く、舞台転換のト書きを手直ししてもらったり、俳優に当て書きをするつもりが「一人にはまれば一人に向かず...」という調子でうまくいかなかったり...。難航しているのを見かねた劇団のほうから「では、幹部俳優が揃って出る一番目の狂言ではなく、少し軽い二番目の狂言にしましょう」と申し出てもらったものの、今度は二番目にするには上演時間が長く、道具も大掛かりになりそうだということで、結局、その戯曲は見送られることになってしまいました。

 代わって、急遽持ち上がったのが、『高野聖』を芝居として上演することでした。鏡花自身もかねてから構想していたことではありましたが、果たしてこんな変わった登場人物ばかり出てくる芝居を、演じる人がいるのだろうか...と心配したようです。
道具調べを見学して、舞台裏の慌ただしさに仰天したこと、作者としては言いたいこともあるが、舞台にのせると決まったからには演じるほうにすべてを任せ、観劇するのを楽しみにしていることなどを『歌舞伎』54号(明治37年10月発行)の「本郷座の高野聖に就いて」という文に寄せています。
(み)

※このとき上演されなかった戯曲は『深沙大王(しんじゃだいおう)』で、のち大正3年4月明治座で上演されています。

解説

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