『NINAGAWA十二夜』記者会見
尾上菊之助―――
この度の再演、本当に嬉しく思っています。初演時は、シェイクスピアをどのようにして歌舞伎にするか、という戦いでした。
初めは歌舞伎テイストの脚本だったんです。しかし、これではシェイクスピアじゃない。それで、もう一度立ち返ってシェイクスピア側で本を書いてみると、今度はシェイクスピア劇になってしまって、歌舞伎にはならなかった。
それを何度もくり返していくうちに、上手くミックスされて出来上がったのが、この『十二夜』です。
その初演のものを、いろいろと変えたいところもあるし、私自身も俳優として変わってきたところもあります。役柄に関しては、男と女の使い分けを以前よりも、もっとはっきりと面白くお見せしたいと思っておりますし、踊りも大幅に変えたいと模索している最中です。
蜷川先生のおっしゃるとおり、私も新しい気持ちで臨んでいきたいと思っております。
蜷川さんの演出について―――
菊五郎―――
歌舞伎の場合は、“塵鎮め(ちりしずめ)”といって、幕が開いてから3~5分くらいは、芝居を観なくても話が通じるように出来ていますが、蜷川さんのお芝居は、開いてからの10分が勝負。いきなりダーンとあのミラーを見せて、桜の木を見せる。私が演出をさせてもらうときにも、ああそうだ最初の1分が勝負なんだ、と思い出したりして。
それと音使い。我々には、こういう場面はこういう音といった観念があるんです。
「その音が嫌いだ、何か無いか?」と言われまして、色んな音を考えて、とても面白かった。細かい音の感覚まで研ぎ澄まされていて、決まりに流されてしまう僕たちは良くないなあと、改めて勉強させていただきました。
菊之助―――
素晴らしい空間術。いつもの歌舞伎の舞台が、鏡をあのように使って、素敵な空間になってしまう。鏡1枚という発想なんですけれども、鏡1枚の発想が出てきません。劇場という限られた空間に、無限の空間を作る蜷川先生は凄いと思いました。
歌舞伎から学んだことは―――
蜷川幸雄氏―――
(役者さんが)上手いですね。それから、現場で音楽など全部を組み合わせて作っていくコラボレーションが面白い。最近僕自身の演出もそうなっているんです。現場で俳優さんの演技、スタッフの力を総合的に掛け合わせていく。それが凄く勉強になっていて、何か(歌舞伎の)秘密にちょっと触れたような気がします。
そういう濃密な演劇的な時間の積み重ねで出来上がってる良さっていうのが、僕らが現代劇をやるときに、もっと取り入れても大丈夫だと感じるようになって、とても感謝しています。
4月にロンドンで『コリオレイナス』というお芝居をやるんですが、その中でも歌舞伎的な手法を使っています。『十二夜』を歌舞伎座でやらせていただいたことによって、外国で芝居をやる場合、日本人としてのシェイクスピアをはっきり見せよう、という考えになったからだと思います。
作品を作ってゆく楽しさと大変さについて―――
菊之助―――
大変さといえば、シェイクスピアを歌舞伎にする…本当に模索の中で始めたことなので、どうしたら歌舞伎になるんだろうという問題にいつも突き当たっていました。極論をいってしまうと、歌舞伎役者が演じて、歌舞伎の板の上に乗っけるということは、イコール歌舞伎になるんだなという答えが僕の中にちょっと出たような気がしています。
楽しかった事といえば、劇場がパッと明るくなって、「ああ、こんなにたくさんのお客さんに、いらしていただいていたんだ。」という感動と、「この作品に取り組めてよかったな。」という喜びですね。
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6月1日には、初夏の博多の風物詩としてすっかり定着した“博多座・船乗り込み”が出演者によって行われ、2ヶ月にわたる『NINAGAWA十二夜』の公演がスタートします。
新しく生まれ変わる『NINAGAWA十二夜』。今から楽しみです。
博多座6月『NINAGAWA十二夜』
歌舞伎座7月『NINAGAWA十二夜』
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