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玉三郎 中国昆劇と合同公演

玉三郎 中国昆劇と合同公演

 坂東玉三郎と、ユネスコ世界文化遺産に認定されている中国の伝統芸能、昆劇との合同公演が日中の2ケ国において開催されます。3月に蘇州昆劇院の俳優が約40名来日し、京都南座にて公演。また5月には同公演を本場中国、北京・湖廣会館にて上演いたします。

 昆劇は600年以上の歴史を持ち、明朝から清朝にかけての200年あまりにわたり、劇壇の王座を占めてきました。女方の原点とも呼べる昆劇の現在の素晴らしい芸術性に光を当てて復活してほしいという坂東玉三郎の強い思いによって実現に至った本公演は、両国の役者がひとつになって取り組むという、日中の文化交流としても意義深い取り組みと言えます。

 公演に先立ち、坂東玉三郎らが出席し記者会見が行われました。

蔡少華(中国昆劇院院長)―――

蔡少華(中国昆劇院院長)

 この度の合同公演は、我々昆劇にとっても大変光栄な事でございます。ユネスコ世界文化遺産に登録されている昆劇は中国の伝統文化の代表で、東洋の美意識を極限までに高めて体現した全人類共通の精神的な文化財であります。

 昆劇の特徴は、必ず舞と唄が一体となって演じられることです。唄があれば必ず舞があります。そして、精神の本質を正確に表現し、叙情生に富んだ、人間性豊かな演劇です。それ故、今日に至ってもなお、昆劇は中国演劇の最高の手本といわれ続けています。

 今回の公演には大きな3つの見どころがございます。

 一つ目は、昆劇の最も伝統的な演劇の形式を蘇らせるということです。今回、清の時代に宮廷の祝賀の儀式で採用されておりました形式を蘇らせて再現いたします。

 二つ目は、『牡丹亭』で、杜麗娘(とれいじょう)という一つの役を、場面ごとに玉三郎さんと中国の二人の女方の役者が演じ分けるということです。中国と日本両国のすばらしい芸術家たちが緊密に協力しあうことによって一つの演目を作り上げる。これは中国と日本の演劇交流の演出において先駆けになるものではないでしょうか。

 三つ目は、女方の伝統を復活させるということです。昆劇にはかつて女方がありましたが、今だんだんと無くなってきております。このことは女方をぜひ復活させたいという坂東玉三郎さんの熱い思いによって実現に至りました。

 両国の芸術家たちがこのように交流し、お互いに学び会うということは、芸術を伝承するばかりでなく、文化文明そのものを継承することになります。今回の合同公演は中国と日本の演劇交流、文化交流史上の美談になり、そしてまた、世界演劇芸術の分野において大きな影響を与えるものと思っています。そして今回の公演を通じ、玉三郎さんが、昆劇に新しい命、新鮮な息吹を吹き込んでくれるものと確信しております。

坂東玉三郎―――

坂東玉三郎

 私は歌舞伎俳優として、いろいろな国の演劇を勉強して参りました。特に祖父や父は、京劇との交流もあり、中国演劇の、女方の芸術、音楽、脚本のすばらしさ、というものを良く聞かされて育ちました。

 中国の演劇を深く勉強しておりますうちに、600年前中国で生まれた昆劇という古い歴史を持つ演劇に出会いました。昆劇の中でも大変に素晴らしい『牡丹亭』からは、『牡丹灯籠』など、日本の演劇も影響を受けていて、その根本というものを知りたく思い蘇州に参りました。

 そして蔡院長とお会いして、お話をうかがっておりますうちに、『牡丹亭』に触れてみないか、そして、どこかほんの一節・・・それがだんだんと高じて、今回の公演となり、三人の女方が場面によって変わり共演するということになりました。一生懸命勉強しておりますが、何しろ中国語の中でも昆劇の言葉というのは大変難しいものですので、これからみんなと一緒に蘇州で勉強して参ります。

 そんなお話の中で、日本の作品は上演できないだろうか、『楊貴妃』はどうだろうかという事になりました。私は以前『楊貴妃』を30分程の舞踊劇として演じておりますが、今回は昆劇の演奏家・演者の方と一緒に、昆劇の演し物として、新しい昆劇の作品に私が入って演じるというかたちで上演させていただきます。

 昆劇院では、将来の人たちを育成するということに力を注いでおられることもあり、『牡丹亭』のお相手役には兪君、『楊貴妃』では周君、という若い方々と一緒に共演させていただくことになりました。

 中国でも昆劇というのは大変難しいものとされています。私がそれにどこまで足を踏み込めるか判りませんが、ここで学ばせていただいた事が、将来の自分の舞台活動のためになればと思っております。そして、チャレンジと同時に、これを東洋、中国、蘇州の芸術演劇として皆様に楽しんでいただき、ご紹介できればと思っています。

兪玖林(ユ ク リン)―――

ユ ク リン

 この度、『牡丹亭』で国際的にも有名でいらっしゃる玉三郎さんの相手役として共演させていただくことを大変光栄に存じております。

 稽古を通じて、玉三郎さんからいろんなことを学ばせていただきたいと思っております。

 

周雪峰(シュウ セツ ホウ)―――

周雪峰(シュウ セツ ホウ)

 この度の公演で、有名な歌舞伎俳優でいらっしゃいます玉三郎さんと共演させていただくこと、大変光栄に思います。

 『楊貴妃』は玉三郎さんの代表作の一つで、その中で方士の役をやらせていただく事になり、大変燃えております。今回この役は私にとりまして大きなチャレンジでもあります。

 玉三郎さんにいろいろと勉強させていただきたいと思いますし、歌舞伎にもいろいろ学ぶところが多いと思いますので、そちらのほうもぜひ勉強したいと思っています。


昆劇の魅力について―――

玉三郎―――
 非常に繊細な音楽と繊細な唄、それから、繊細な演技方法というものが特徴だと思います。今は劇場で演じられておりますけれど、当時はお庭をもっている大きな家の方たちが、それぞれ自分たちの劇団を持ち楽しんだことから生まれた演劇なので、非常に細かいところ、繊細なところを大事にしています。

 それから、上演に10日間もかかったというように、脚本が膨大な物であるため、非常に人間の哲学といいましょうか、人生という物が、直接的でなく、優雅な時間が流れる中で舞台芸術として醸し出されているという点が特徴だと思います。


松竹が海外公演を主催することについて―――

安孫子 松竹(株)専務取締役―――
 日本だけにとどまらず、海外でも我々が歌舞伎の製作を行い現地で公演をするという夢がございます。至難の業ではございますが、今回もいろいろな企業の方々に絶大なるお力をいただいた上で、歌舞伎の新しい第一歩として、私どもがこの公演を主催させていただくことになりました。

 ですから、芸術的にはもちろんですが、興行的にも成功することが、これからの海外公演の命運を左右するのではないかなと、我々も心してこの興行にあたっていきたいと思っております。

 玉三郎さんと昆劇の方々との共演という、文化的にも歴史的にもすばらしい公演を皮切りに、このような展開できることは、私たち松竹にとりましても有難いことだと思っています。


女方復活への熱い思い―――

玉三郎―――
 中国の女方で活躍していらっしゃる方はごく少数で、若い俳優が目にするという事が大変少ない状況です。

 ですから、出来る限り良い物を兪君、周君と一緒に演じられることが将来の為になると思っております。そして、一緒に演じる中で、何かを汲み取ってもらい、将来の中国の女方について何か考える種になればいいと思っています。

 そして皆さんが、憧れるとか、綺麗だなとか思ってくださることから、見た人たちの気持ちの中に何かが立ち上がってくる、ということを期待するのが一番良いと思っています。

 

玉三郎 中国昆劇と合同公演

玉三郎の魅力について―――

兪玖林―――
 私は昆劇の立役で、実は女方についてほとんど知識がございませんでした。去年の6月に玉三郎さんが蘇州においでになり、化粧をされ杜麗娘の衣裳を着けられて、現場で少し演じてくださいました。

 その時の玉三郎さんの舞台姿はうっとりするほど美しく、もちろん美しいということは聞いておりましたけれど、私の想像を超えるほどでした。

 さらに素晴らしいと感じたのは、難しい昆劇の唄の節回しが本当にお上手だったことです。杜麗娘は玉三郎さんにぴったりで、素晴らしい舞台になると思います。

周雪峰―――
 私は玉三郎さんの演じられた楊貴妃のDVDを拝見しました。人物のリアルさ、神技に迫るところが本当に驚きで素敵だと感じました。


中国の昆劇と日本の歌舞伎の融合―――

蔡少華院長―――
 今回のように、違う国の人々が一つの舞台を作り上げる事は非常に難しいことです。これを支えているのは、玉三郎さんの熱心なご努力でございます。

 玉三郎さんは天賦の才がおありになりますが、それに加えて、台詞回し、唄の節回しが非常に難しい昆劇を、マスターしようと努力されておられます。このことは敬服すべきものであります。

 日本と中国は同じ東洋の民族で、独特の気持ちの通い合いは共通の物でございます。この度、日本と中国がこのように合作して合同公演をするということは、歌舞伎界にとっても昆劇界にとっても、新しい未来を切り開いていくということになるとおもいます。三月のこの公演をぜひご期待していただきたいと思います。

安孫子―――
 歌舞伎と昆劇がぶつかり合うのではなく、玉三郎さんが歌舞伎の女方の技術を持って昆劇の世界にはいっていくということになると思います。

 非常に個人的な見解ですけれど、いま、不幸にも中国の演劇の女方というものがやや衰退しているという状況は否めない事実ではないかと思います。この話をうかがったときに、歌舞伎を代表する玉三郎さんの女方というものが、中国の昆劇にも注入され、改めてまた女方のすばらしさというものを感じ取っていただくことができれば、これは本当にすばらしいことだと思っています。

 日本と中国の演劇は似て非なるものだと思いますけれど、その中で共通点を見い出しながら、女方のすばらしさを再確認してもらえれば、こんなにすばらしいことはないと思います。

玉三郎 中国昆劇と合同公演

玉三郎―――
 22年ほど前、国立劇場で『牡丹亭』を大変感動して見た覚えがあります。そしてこれが中国の舞台芸術であるということを深く認識しました。

 杜麗娘が会えない恋人に、はるかな思いを抱いて死んでいく、その情景や雰囲気というものは、日本でも十分にわかります。そして、これほど遙か遠く離れたところでも、同じ雰囲気を違った楽器と違った言葉と違った様式で表現している、その事に非常に深く感動しました。

 この瞬間を私が演じさせていただく事があるとは夢にも思わなかったことですが、その感動した雰囲気というものが、今回の公演に導いてくれたんだと思っております。

公演情報はこちらをご覧ください。
坂東玉三郎 中国・昆劇 合同公演

2008年01月29日

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