コクーン歌舞伎『夏祭浪花鑑』初日を前に

コクーン歌舞伎『夏祭浪花鑑』初日を前に

 演出家・串田和美と中村勘三郎が出合い1994年から斬新なこころみを続ける「渋谷・コクーン歌舞伎」。第9弾となる今回は、大坂を舞台に義理ある主人を守るために命を賭ける男たちの物語『夏祭浪花鑑』の上演です。

 シアターコクーンでの『夏祭浪花鑑』は、5年ぶり3度目の上演となります。また、先月5月には欧州公演として演劇文化都市ベルリン、ルーマニアで上演され、いずれも大成功を収め話題となりました。

 初日を前に、演出の串田和美、主演の中村勘三郎の他、舞台となる大阪から"くいだおれ太郎"が応援に駆けつけ、囲み取材が行われました。

今回は凱旋公演―――

中村勘三郎―――
 ドイツとルーマニア、それぞれ違った興奮で、僕は一生忘れないですね。ドイツでは、日に日に盛り上がってきて、千穐楽の日には劇場にある見切り線を越えてお客さんがいっぱいに。波のように押し寄せる悲鳴のような歓声は本当に凄かった。最後はドイツ語で「もう一度ベルリンに来たい」と挨拶をしたら、それも凄いことになっちゃって(笑)。

 ルーマニアは演劇祭ですから、色々な国の演劇関係者がいて、その中で、ルーマニアの人達による『ファウスト』と歌舞伎が評価を二分しているって言われ、両方金メダルだよなんて言ってくれていたんです。そうしたら、その『ファウスト』の演出家が「僕らはホーム、君らはアウェイだから、君たちのほうがちょっと上じゃないかな」なんて上手いことを言ってくれて。うれしくて、たまんないよ(笑)。


中村橋之助―――
 ルーマニアは舞台が工場ですから、最初は本当にここで芝居ができるのかなって(笑)。でも何か、本来の芝居のあるべき形みたいに思えてきて、常々コクーンや平成中村座でやるにあたって、みんなで夢のように話していたことが実現できたような気がします。


中村扇雀―――
 ルーマニアのシビウは小さな町ですが、そこに世界70カ国以上、300団体以上の演劇チームが集まって、自分たちの色を出し、そしてみんな演劇祭を楽しんでいました。芝居ってこれだけすごいエネルギーを生むんだとあらためて感じ、ぜひ歌舞伎を通じて世界の方に演劇の楽しさを広げたいという気持ちになりましたね。


坂東彌十郎―――
 ベルリンとルーマニアの民族の違いがすごく面白かったですね。ベルリンではじわじわと反応が伝わってきて、シビウでは、終わった瞬間にドーッと反応があって。よく聞いたらルーマニアはラテン系の民族なんだそうです。同じヨーロッパでもあんなに受け方が違うのが、すごく面白かったですね。


笹野高史―――
 口コミがすごく早いんですね。日本での経験では1週間くらいかかるんですが、ヨーロッパではこんなに早いの、っていうくらい(笑)。それだけ、演劇人口が多くて伝わるのが早いのでしょうね。生活の中に演劇が浸透している国民なんだなと感じました。


中村七之助―――
 ベルリンもルーマニアも初めて行く国だったので、どうなるか心配でしたが、みんなとても喜んでくださいました。スタッフの方々も大変な環境にも関らずみんな一丸となってくれて、チームの強さを改めて実感した旅でした。


中村勘太郎―――
 ベルリンのお客様は演劇をよくみる習慣があって、演劇が体に染みついているようでした。最初はじっくりと芝居を見ていて、そして序々にお客様の感動がこちらにも伝わってくるんです。シビウは演劇祭で、みんながお祭りを楽しんでいる感じでした。町に出ると、こちらが日本人だと解ってくれて、「大阪!」と声をかけられたり(笑)。楽しかったです。


片岡亀蔵―――
 シビウでパーティーに行ったとき、悲しいかな、もう少し英語がしゃべれたらな、と思いました。色々な国の俳優たちと、情報交換ができたら良かったのですが・・・これからの課題ですね。


串田和美―――
 客席をずっと見ていました。それが凄く面白くて。ドイツの人はね、感心を持っていても最初は引き気味で、それが段々ワーっとなっていく。ルーマニアの人はラテン系でしょ。最初から楽しもうしているから、「何?何?」って顔をして見始めるんです。とても対照的で面白かったですね。


今回の舞台―――

串田和美―――
 今までも、色々な所でやってきて、今回、ルーマニアは工場で、ベルリンは一応劇場ですが、コンサートや会議場も兼ねたところ。でも、そういうところでもできるんですよね。昨日この劇場で稽古していて、本当に良い劇場で、日本は凄く恵まれた国だと改めて思いました。もっと中身もしっかりしないと恥ずかしいぞ、と思っています。


中村勘三郎―――
 中身に関しては、今回が一番良くなっているという自信があります。見ていただければ、本当にありがたいです。面白いものをおみせします。
 それと、ここに"くいだおれさん"がいるので嬉しくて(笑)。初演の時、初めてロビーに来てくれたんですよ。今度無くなるって聞いていたから、寂しい思いでいましたが、今日会えたので嬉しくてびっくりして(笑)。義理堅いんだね。

 大阪が舞台となる『夏祭浪花鑑』。"くいだおれ太郎"は15日までBunkamuraロビーでお客様をお迎えします。
 公演情報はこちらをご覧ください。

コクーン歌舞伎『夏祭浪花鑑』初日を前に

2008/06/10