三津五郎、菊之助が語る『野崎村』『江島生島』

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 11月の 「松竹大歌舞伎」で、全国18カ所の公演を行う坂東三津五郎、尾上菊之助が、上演する『野崎村』『江島生島』について語りました。

坂東三津五郎

 今秋の「松竹大歌舞伎」は北海道から沖縄まで、文字どおり全国で行われる公演。三津五郎は「一幕で起承転結のあるお芝居、ストーリーのある舞踊劇、お客様にわかりやすい演目をと菊之助さんと考えました。二人とも初役ですが、これは二人の意欲の表れと理解してください」と、公演に向けての熱い気持ちから切り出しました。

心を込めて演じる――『野崎村』
 「久作は祖父(八世三津五郎)がよく演じていました。老け役ですが、娘を思い、張り裂けんばかりの気持ちで見守る...、人間愛が伝わってきます。心を込めて演じたい」と、三津五郎。菊之助は「お光という少女の悲恋のお話を、心でお見せすることが一番。祖父(七世尾上梅幸)が14度も勤めており、縁を感じる役ですが、(好きな人のために尼になるという)自己犠牲を伝えるのは難しく、純朴な女性をどこまでできるか挑戦です」と、ともに初役への意気込みを語りました。

 菊之助は浅草歌舞伎(平成9年1月)でお染を演じており、そして三津五郎も久松(昭和56年7月国立劇場)、お染(昭和54年5月朝日座)を演じていますが、「まだ20代で、教わった型をなぞるので精一杯でした。今回の息子(巳之助)や右近君も同じだと思いますが、型を超えて気持ちが一つになるようにリードしていきたい」と話し、「一座の緊密さを大切にして、いい形で芝居を」と、地方公演だからこその期待を寄せました。

二人にゆかりのある舞踊劇――『江島生島』

尾上菊之助

 三津五郎が「生島新五郎に魅力を感じており、いつか踊ってみたかった」と言う『江島生島』は、六世菊五郎が大正2年歌舞伎座の舞踊研究会で初演した作品。三津五郎の曽祖父、七世三津五郎が旅商人として共演したこともあり、三津五郎と菊之助には縁のある演目です。「六代目が練り上げた舞踊劇で、前半はなまめかしい大奥の女性、後半は海女。二役を早替りでお見せします」と、菊之助も意欲的に話しました。

 「美しい盛りの菊之助さんの奥女中と海女をお見せして...、あ、菊之助さんは尼と海女、両方とも"あま"だね」と、場を和ませた三津五郎は、「お客様に見ていただくことで芸は磨かれます。"私たちが芝居を、役者を育てるんだ"と思って見に来てください。それが我々の薬にもなります」と歌舞伎をアピールし、会見を締めくくりました。

 二人とも「旅が大好きなので」各地へ行くのを楽しみにしているとこのこと。ぜひ、お近くの会場へ足をお運びください。なお、チケットは 公演情報にある各会場のお問い合わせ先をご覧ください。

2013/07/31