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錦之助「歌舞伎夜話」登場、明かした秘密の数々

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 4月17日(日)、歌舞伎座ギャラリーで開かれた「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話(かぶきやわ)」第16回に、中村錦之助が登場して語りました。

 「萬屋!」の大向うと拍手で迎えられた錦之助。今月は歌舞伎座昼の部『不知火検校』に、指物師房五郎で出演中です。実は検校の妻、湯島おはんと通じているという遊び人の役どころ、「女たらしの場合は、相手の女性だけにはよく見えるけれど、ほかの人からは嫌な奴に見えるような工夫を考えますね」と、早速に役づくりの秘訣を明かします。

 

 「持ってるお金は遊びに全部使っちゃって、きれいな足袋だって買えないはず。羽織も自分では持ってなくて、親方から借りたかもしれない」。演じる役の性格、暮らしぶりを考え抜く様子にお客様も感心しきりですが、「舞台に出たら、なりきってやるだけ」。あっけらかんと語ってみせます。

 

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 つっころばしに若衆、敵役、赤っ面と、幅広い役柄を演じる錦之助ですが、何度も勤めた『義経千本桜』の義経は難しいと語ります。「品よく、行儀よくはもちろんですが、知盛が打ってかかろうとして、おののくような御大将の格が備わらないと。きれいで柔らかいだけじゃだめですね、そういうことを意識して、少しずつ自分の義経が変わってきたと思います」。

 

 立廻りについて、『仮名手本忠臣蔵』「十一段目」の泉水の立廻りには、特別な思い入れがあるようです。「竹森も小林も勤めました。雪の玉を投げ合う工夫、僕が考えました。当たると雪が弾けるように、雪の紙を水で固めて玉にしています。小林が倒れたときに、フワッと雪が舞う秘密も、僕の工夫ですよ。歌舞伎は、前回の上演ではこうでした、で止まるのが一番いけない。新しいことを取り入れて、それでいて古典に見えるようにしたいですね」と、前を見据えます。

 

 自身の歌舞伎俳優としての基礎は、若手の勉強会「杉の子会」で受けた諸先輩俳優からの指導。「子ども相手に本気で教えてくださったことが、ようやく身についてきました。教えてくださった十七世勘三郎のおじ様のように、自然にやって“時代”になるというのを、今、一所懸命実践しているところです」。

 

 その後はスーパー歌舞伎の立ち上げにも参加、「今の隼人と同じくらいの年でしたが、三代目猿之助(現・猿翁)さんにどうにか食らいついてやろうと必死でした」。五世富十郎には、「浄瑠璃の大切さに加えて、役者の心意気、大きさを教わりました」。二代目錦之助を襲名し先輩方から受けた教えを「今、入れた引き出しの中から少しずつ出して、播磨屋のお兄さん(吉右衛門)とご一緒させていただいております」。

 

 これから勤めたい役を問われると、「今まで勤めた役を、もう一度。一つの芝居が終わると、次はああしよう、こうしよう、と考えています」。常に新しい工夫を探して楽しげな様子に、お客様も思わず笑みがこぼれる、錦之助の魅力があふれた一夜となりました。

 

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2016/04/20