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時蔵、「歌舞伎夜話」で語った伝承への思い

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 4月19日(火)、歌舞伎座ギャラリーで開かれた「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話(かぶきやわ)」第17回に、中村時蔵が登場しました。

 この頃は、教え伝えることをより意識するようになったと言います。菊五郎とたびたび共演した『十六夜清心』は、「今度の5月に初めて、菊之助さんのお相手で勤めます。いつか(長男の)梅枝も、菊之助さんに『君のお父さんはこうしてたよ』と教えていただく日が来るでしょう」。“バトンタッチ”が歌舞伎のよいところ、と語りました。

 

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 父、四世時蔵は夭逝しましたが、時蔵家の芸は「(二世)又五郎のおじさんが、祖父(三世時蔵)の芸をよく覚えていてくださいましたので、いろいろと教えていただきました。それから、うちの時蝶は祖父のときからの弟子ですので、幼い頃からいつもそばで助けてくれました」。そのほか、初役を勤めるときには「立役の方に、どなたに習えばいいかうかがいます」と、女方ならではの心遣いも見せました。

 

 「大きなお役になると(六世)歌右衛門のおじさん、(七世)芝翫のおじさん、世話物や立役だと(七世)梅幸のおじさんに教えていただきました。(十七世)勘三郎のおじさんに学ぶことも多かったです」。諸先輩の教えは「財産を分けてくださるのと同じ」。正しいことを伝えようとしてくれた人の思いは、大切にしなければならない、と言い切ります。

 

 「菊五郎のお兄さんとご一緒させていただくうちに、いつの間にか自分も教える側に回っていました」。世話狂言は、意外に決まり事が多いのだとか。「たとえば『魚屋宗五郎』おはまなら、茶碗の置き場所。飲ませまい、とするように見せながら、相手が手を伸ばすところに茶碗があるようにしないと」。めいめいが教わった決まり事を再現するだけではなく、「チームで何度も“揺すって”いくうちに、固まっていくのが、世話狂言だと思います」。

 

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 勤めた役の数々に漂う、なんともいえない色気の秘密を問われて、「自分では、色っぽくやろうと思ったことはなかったですね」と、さらりと答えます。女方の心得を、「お化粧、衣裳、鬘(かつら)、どうしたらこの役に合った形になるか、自分では完璧だと思えるまで下準備して、そのうえで役になりきるのが大事」と、役柄によって変わる着物の合わせ、帯の位置など、細かな工夫も明かしました。

 

 一方、「実は立役も好き」と、今年6月の博多座で、29年ぶりに勤める『熊谷陣屋』義経についても話が進みました。「(二世)又五郎のおじさんに習いましたが、(化粧で)口をちょっと割ります。『熊谷』の義経は結構強いんですよ」。いかにも楽しみな様子には、お客様からも期待の歓声が。

 

 十世三津五郎と幾度となく勤めた『喜撰』ほか、舞踊の話題では、「歌舞伎役者が踊る以上、芝居心のある踊りをと思います。先月、歌舞伎座で踊った『女戻籠』などは、ただきれいに踊るだけでなく、なんとなく物語風のところがあって…。風俗舞踊は好きですね」。

 

 書や日本画もたしなむ時蔵ですが、すべて自らの芸を磨くことにつながると言います。最近は陶芸に凝っていて、「ろくろに向かうと無心に集中できます」。広く深い、時蔵の世界の一端に触れたところで、今宵の「歌舞伎夜話」はお開きとなりました。

2016年04月22日

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