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雀右衛門が語る「七月大歌舞伎」襲名披露

雀右衛門が語る「七月大歌舞伎」襲名披露

 

 

 7月3日(日)から始まる大阪松竹座「関西・歌舞伎を愛する会 第二十五回 七月大歌舞伎」で、襲名披露を行う中村雀右衛門が、公演への思いを語りました。


 3月に歌舞伎座で雀右衛門を襲名し、来月の博多座に続いて7月の大阪松竹座では、「生まれ故郷の大阪で、あらためて襲名披露興行をさせていただきます」と、表情を引き締めて意気込みを見せた五代目。「口上」のほか、昼夜で3演目に出演します。

 

雀右衛門襲名にふさわしい役を

 昼の部『夕霧名残の正月』は藤十郎襲名の折(平成17年12月南座)、新たに舞踊劇として構成された作品で、夕霧を四世雀右衛門が勤めました。「藤十郎のおじ様とご一緒の舞台をさせていただくのに、この演目が雀右衛門襲名としてふさわしいかなと」。夕霧は「位の高い遊女で、何をするわけでもなく、風情や雰囲気をお客様に伝えないといけない難しいお役です。『本朝廿四孝』「奥庭」の八重垣姫をさせていただいたとき、父は、そういうものを“出”でお客様に感じてもらうことが大切、と言っておりました」。

 

雀右衛門が語る「七月大歌舞伎」襲名披露

 夕霧の衣裳などは父、四世雀右衛門のものを使います。雀右衛門の向かい雀の紋があしらわれた豪華な帯も襲名にふさわしく、艶やかなひと幕となることでしょう。

 

 続く『与話情浮名横櫛』では仁左衛門の与三郎を相手に、お富を勤めます。「赤間別荘は初めてですが、見染と源氏店は何度かしております。最初から最後まで、男の人をひきつける魅力を随所に出さないといけません」と、四世が何度も手がけた役に8年ぶりに挑みます。

 

仁左衛門の相手役として四世の役を受け継ぐ

 夜の部は「口上」のあと、『鳥辺山心中』に遊女お染で登場します。「松嶋屋のお兄様(仁左衛門)が父と共演したとき(平成14年7月大阪松竹座)、本当に可愛くてとてもよかったとおっしゃられていました。性根を強く持って気持ちを湧き立たせないとお客様に思いが伝わりません。型があるものではないので、そういうところがダイレクトに舞台に表現されることになると思います」。気持ちをもっと強く持つようにとの父の教えを、特に心に留めて演じると語りました。

 

雀右衛門が語る「七月大歌舞伎」襲名披露

 「最初のところは見た目もすっきりしていないといけませんから、少しシェイプアップしようかと…」と、見た目の美しさを追求する姿勢は父譲り。与三郎、半九郎として四世の相手を勤めた仁左衛門が、今度は五代目を襲名した新雀右衛門と共演するわけですが、「父とやっていらしたことを教えていただきながら、この公演を通して父のしていたことを身につけ、お客様に喜んでいただけるようになれば」と語る言葉には、雀右衛門の名への深い愛着が感じられました。

 

雀右衛門の名前に込める思い

 雀右衛門を名のって3カ月。「雀右衛門になったからといって、早々、人は変わるものではありませんが、これを一つの大きな転機として、また、父の“女方は60歳から”という言葉も励みにしながら、いい舞台を踏んでいきたいと思います」と、飛躍を誓う頼もしい言葉も出ました。

 

 3月の歌舞伎座では「父が使っておりました鏡台を楽屋に持ち込んだのですが、化粧をするのが不思議な感じで、上からじっと見られているかのようでした」。4月になってチラシに、「芝雀改め」の文言がなく「雀右衛門」と記されたのを見て、「ああ、そうなんだなと、あらためて思うところもありますが、雀右衛門の名前を身体にぴったりさせるには、まだまだ相当努力しないといけませんね」と、どこまでも謙虚な姿勢を崩さない五代目雀右衛門です。

 

 「一つでも二つでも多く父と同じものを勤めたい。そして最終的には、『伽羅先代萩』の政岡みたいなお役をきっちり勤めあげられる俳優を目指したい」。謙虚ながらも、高い志で雀右衛門の名前を磨きあげようとする五代目。四世雀右衛門から受けた数々の教えが、これからの一つひとつの舞台に形となって表れます。7月大阪松竹座も父譲りの三役、見逃せない舞台になりそうです。

 大阪松竹座「関西・歌舞伎を愛する会 第二十五回 七月大歌舞伎」は、7月3日(日)から27日(水)までの公演。チケットは6月5日(日)より、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹にて発売予定です。

2016/05/19