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「團菊祭五月大歌舞伎」九代目坂東彦三郎、三代目坂東亀蔵襲名披露に向けて

「團菊祭五月大歌舞伎」九代目坂東彦三郎、三代目坂東亀蔵襲名披露に向けて

 5月3日(水・祝)から始まる歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」で、襲名披露を行う坂東亀三郎、坂東亀寿が、今の心境と公演に向けての思いを語りました。

羽左衛門型を見せる『梶原平三誉石切』

 襲名披露狂言『梶原平三誉石切』の梶原で、九代目坂東彦三郎となる亀三郎。家に伝わる十五世羽左衛門の型で見せますが、「形で見せるのも大事、役者の魅力で見せるのも大事。見たことのない十五代目に近づこうというより、今できる私の梶原を」と、気負いはありません。彦三郎の息子として生まれた以上、「子どもの頃からいつかは、と準備している段階が長かったので」、その時が来たからといって、急に慌てることもありません。「役は大きいけれど、やる過程は一緒。せりふを覚え、くだいて自分のものにする」だけです。

 

 三代目坂東亀蔵となる亀寿は、祖父も兄も勤めた俣野五郎で、父の二代目坂東亀蔵襲名時(昭和47年5月歌舞伎座)の台本をもとに勉強中。「せりふが普通の『石切』と違う。本当に事細かく演技のことまで書いてありました」。この舞台には出演していなかった叔父の萬次郎が、あらゆる役について書き込みをしていたことが、今回の三代目襲名に役立ちそうです。

 

「團菊祭五月大歌舞伎」九代目坂東彦三郎、三代目坂東亀蔵襲名披露に向けて

親子孫、三代が並ぶ『壽曽我対面』 

 夜の部の襲名披露狂言は『壽曽我対面』。亀三郎の五郎は初役ですが、これまで近江などで出演しており、「音として、気配として、空気として体に入っているはずだから、視覚として見えなかった部分を確認し、心構えを父に落とし込んでいただき、自分のものにする。今は確認作業のほうが多いです」と、こちらも準備に怠りがありません。「一人であがいても形になる作品ではないでしょうから、(共演の)皆さんの胸を借ります」。

 

 初代楽善を名のる父、彦三郎からは、「平常心でいなさい。持っている以上のものはできない。それ以上の力を出そうとか、合格点をとろうとか無駄なことを考えず、目の前のことを、当たり前のことを当たり前にやりなさい。そのために準備をしっかりしてきただろう」と言われてきたので、襲名も「いつもよりその思いが強い」だけで、大きいことをする緊張感はないと亀三郎は言います。

 

 「私の緊張は、神聖な場所に立つ、舞台とはそういう場所だと教えられてきたので、その意味での緊張は持っています」。その教えは、自分の名を受け継ぐ初舞台の侑汰にも受け継がれることでしょう。「本人はやる気満々。のびのび演じてほしい。最初から100だったらつまらないでしょう?」と言いつつも、自分が五郎として顔を合わせたら「どんな顔するんだろう」とも。劇中の「口上」が楽しみです。

 

「團菊祭五月大歌舞伎」九代目坂東彦三郎、三代目坂東亀蔵襲名披露に向けて

しっかり踊りこんで見せる『弥生の花浅草祭』

 また、亀寿は、『弥生の花浅草祭』で、松緑と四変化を見せます。「三社祭」は何度か踊っており、「いつかは四変化で踊ってみたいと思っていましたが、こんなに早くとは。でも早くやらないと体力的に…」と亀寿が言うとおり、かなり体力を使う演目です。「松緑さんが、襲名だし『三社祭』は(途中の踊りを抜かずに)フルで行こうと。ここをどのように乗り越えるかがカギです。踊り込んで体にしみこませていけたらいいなと思っています」。二人の呼吸を合わせることが大切だからと気合いも入ります。

 

 四変化の最後、「石橋」には毛振りがあります。「『連獅子』などより動きが速く、回転する動きも多いので、毛が長いと足にまとわりついてさばききれなくなるらしい。でも、短いと格好つかないし、兼ね合いが難しいです。松緑さんがどれくらい振るのか未知数ですが、ついていくのが大変でしょうね」との言葉とはうらはらに、表情はにこやか。「常磐津、清元、常磐津、長唄と音楽が変わって雰囲気が変わる。踊り分けが難しいけれど、そこが楽しくもあります」。襲名披露興行がひときわ華やぐひと幕で打ち出しとなります。

 

性格のまったく異なる兄弟だからこそ 

 祖父、十七世羽左衛門十七回忌追善でもある今回の「團菊祭」。亀寿は、芸のうえでの厳しさから、普段も近寄りがたい存在だったと言い、「兄弟二人で教わるんですけど、兄がクッションになって僕に大きくくる(叱られる)ことはなかった」と明かしました。物事をすぐに決められる弟と、よく考え込んでから決める兄。同志であり戦友であり、亀三郎の言葉で表すと「タイプが違うから、得手不得手があるなかうまく補える仲間」。

 

 「人に頼られて教えるようになって、視界が開けた、見方が変わったかな」(亀三郎)、「前に比べて余裕ができたせいか、周りを見られるようになった」(亀寿)。ここ数年での変化を語った二人からは、祖父と父から受けた厳しい教えが、いよいよ花を開かせ実をつけることを予感させます。そして迎える襲名披露。「いつも舞台袖に行ってだんだんエンジンをかけていき、舞台に一歩踏み出したとき、カチンとスイッチが入る」(亀三郎)。今度の舞台では九代目坂東彦三郎、三代目坂東亀蔵のスイッチも入ります。

 歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」は、5月3日(水・祝)から27日(土)までの公演。チケットは4月12日(水)、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で発売予定です。

2017/04/07