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萬次郎、竹松出演、新橋演舞場「七月名作喜劇公演」『お江戸みやげ』『紺屋と高尾』

 『お江戸みやげ』 左より、市村萬次郎、波乃久里子

 『お江戸みやげ』 左より、市村萬次郎、波乃久里子

 7月3日(月)、新橋演舞場「七月名作喜劇公演」が開幕、市村萬次郎、市村竹松が出演する『お江戸みやげ』『紺屋と高尾』が上演されました。

歌舞伎の上演でもお馴染みの『お江戸みやげ』

 暑さを笑いで吹き飛ばそうと、喜劇の名作2本を上演する7月の新橋演舞場。一つ目は、歌舞伎でもお馴染みの『お江戸みやげ』です。湯島天神の茶屋に現れたお辻(波乃久里子)とおゆう(萬次郎)は、織った反物を売り歩き、1年分の稼ぎを手にしてようやく家へ帰ろうというところです。くたびれたと言いながら、腰かけてそうそうに一杯ひっかけようとするおゆうに対し、魔性の水より算盤勘定のほうが楽しいと酒には目もくれないお辻。田舎の行商人の風情は同じでも、性格の違う二人のやりとりが笑いを誘います。

 

 お辻も昔は酒が好きだったけれど、「お酒が入ると心が乱れて、しくじりが多い」のできっぱりやめたと言い、「しまり屋のお前さんが、じゃぶじゃぶお金を使うなんて」、聞いただけでもうれしいと、おゆうが酒をすすめます。酒が大好きなおゆうの飲みっぷり、1年分の商売を終えた祝い酒だと久々に口にするお辻の飲み方、そんなところにも二人の違いが見えてきます。

 

『お江戸みやげ』 左:市村竹松

 『お江戸みやげ』 市村竹松(左)

おゆうを軸にお辻の変わりぶりが見えてくる

 そして、国へ帰る前のお江戸みやげにと、ちょっとのぞいた宮地芝居で、二枚目の栄紫(喜多村緑郎)にひと目惚れしたお辻。芝居小屋の座敷で栄紫と会うことになりますが、酒が入ってからのお辻とおゆうの立場は徐々に逆転していきます。しまり屋だったお辻はけちけちするなと祝儀をはずみ、そんなお辻に「お株をとられた」と言いながらも、温かい目で見守るおゆう。人情味にあふれた気のいいおゆうが軸となり、お辻の変化がより際立ちます。

 

 栄紫を前に初々しい恥じらいを見せ、その栄紫のためにありったけの金を出すお辻は、酒でしくじるというよりは、酒によってその優しい心根、一途で純粋な性根が現れたということなのでしょう。「初めて男に惚れた」お辻は、おゆうに「ずいぶん高くついた」と言われる“お江戸みやげ”を手に幸せな顔を見せます。お辻が大きく変わっても、変わらず見守り、粋な計らいをするおゆう。最後は、子どもながらに世間を渡り歩いて情のよくわかった角兵衛獅子の兄(市村竹松)が、なんともいえない空気を醸し出し、後味のよいひと幕となりました。

 

萬次郎が恋路を見守る『紺屋と高尾』

 『紺屋と高尾』 喜多村緑郎(左)、浅野ゆう子(右)

 『紺屋と高尾』 喜多村緑郎(左)、浅野ゆう子(右)

 2本目は講談をもとにした、というより、藤山寛美が名作にした『紺屋と高尾』です。久造(喜多村)は八つのときから染物屋に奉公する堅物の職人。親方の代行として大坂から観音講に来た帰り、上方への土産話にと見た花魁道中で、こともあろうに松の位の太夫、高尾(浅野ゆう子)に惚れてしまいます。吉原仲之町でひと目惚れといえば『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ』、久造は次郎左衛門のように魂を抜かれ、帰ってからは恋煩いで床につく始末。

 

『紺屋と高尾』 市村萬次郎

 『紺屋と高尾』 市村萬次郎

 きびきびと働く職人の留吉(竹松)たちも、久造が気にかかって仕方がありません。親方の吉兵衛(萬次郎)も心配しますが、ようよう打ち明けた久造の話を聞き、「死ぬ前にひと目会いたい」という願いをかなえるため、私もなんとかしようと頼もしいところを見せます。吉兵衛も『お江戸みやげ』のおゆう同様、萬次郎が、人の一生に一度の恋路を心から応援する情に厚い人物を楽しそうに演じています。

 

藤山寛美の当り役に喜多村が挑戦

 一方、高尾太夫は美しさはあっても、苦界に身を置くかごの鳥のつらさを嘆き、年季が明けてもねぐらを持たぬはぐれ鳥と悲しみます。見た目の華やかさに哀愁が重なり、いっそうの美しさを見せる高尾太夫。その高尾の心を動かしたのが、全財産をはたいて会いに来た久造でした。高尾の目には「見得と嘘で固められた廓」に久造の「真っ白な心」が光り輝いて見えたのでしょう。

 

 大坂へ戻り、高尾の起請文を信じて懸命に働く久造、吉兵衛もなんとかしてやりたいと気をもんでいるところへ…。久造の純粋無垢な心は、見る者を味方にせずにはおきません。その計算のない言葉が、行動が笑いを呼ぶのが人情喜劇と呼ばれるゆえん。テンポのよい上方喜劇、おおいに笑って暑さを吹き飛ばしてください。

 新橋演舞場「七月名作喜劇公演」は、7月3日(月)~25日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2017年07月03日

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