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玉三郎が語る、八千代座「坂東玉三郎 映像×舞踊公演」

 
玉三郎が語る、八千代座「坂東玉三郎 映像×舞踊公演」

 10月31日(火)~11月5日(日)、八千代座で「坂東玉三郎 映像×舞踊公演」が開催されます。出演の坂東玉三郎が公演について語りました。

映像を混ぜて『道成寺』『鷺娘』を踊る

 平成2(1990)年の復興記念を皮切りに26年続けてきた玉三郎の八千代座公演。「27年目になり、このままではお客様の目が新しくならない。いよいよ出し物に困っていました」という窮地から生まれたのが、今回の「映像×舞踊公演」です。「シネマ歌舞伎や今までの映像をシネマ歌舞伎用の映像に変換して、自分の実演を混ぜたら、(公演では)やらなくなった『道成寺』『鷺娘』の一部が観ていただけるのではないかと企画しました」。

 

 昼の部では『京鹿子娘道成寺』。使う映像を検討しながらこれから決めていくところと断りながらも、「道行はつけず、初めは映像で、金冠と恋の手習い、振り鼓を踊ろうかと考えています。鐘に乗るところは映像になります」。夕の部の『鷺娘』は、「初めの白無垢姿のところを引抜く手前まで踊り、そこから映像になって、最後のぶっ返って海老ぞりになった後を踊ろうと考えています」。『鷺娘』の前には荻江節の『稲舟』。10分足らずの曲なので、「初めのところだけ映像で、ほぼ中身は踊りたい」。

 

「口上」にも新しいお楽しみを

 八千代座の舞台の手前に新たに大きなスクリーンを設置し、巻き上げると舞台が見えるようにします。舞台奥は白か薄い青色のホリゾントにする予定です。「装置もごく簡単にして、ホリゾントにも映像が映るようにします。『稲舟』は空舞台で、『道成寺』は吊り花程度。『鷺娘』は傘を差す道具くらいにして、使わなくなったら片付け、最後は空舞台に雪が降る中で踊ることになると思います」。

 

 今年、実際に八千代座に機材と映像などを持ち込み、スクリーンの動かし方や映像の映り方などを実際に試してみたところ、「技術の進歩で、かなり横からでもスクリーンがよく見えることがわかりました」。さらに、スクリーンが巻き上がったとき、「偶然にも、後ろのホリゾントに映像がよく映ることがわかり」、自分が映像の映っている中に入ることも、逆に、ホリゾントに映った映像の中に自分が出ていって踊り、そのままスクリーンが下りて映像に切り替わるといった演出など、可能性が広がったといいます。

 

 恒例となっている「お目見得 口上」もこれまでと趣向を変え、「口上もしつつ、たとえば、裃(かみしも)を陰で脱いで着付けになり、踊りの解説を入れたりしようかと考えています。恋の手習いの難しいところはここ、手拭いはこう使うといったように、お客様に親しみを込めて、舞踊家がどういう工夫をしているかお話しし、実際の映像と踊りでなるほどなと納得していただけるなら、そういうこともいいかなと」。

 

八千代座でしかできない公演に

 「与えられたものをそのとき精いっぱいやる、それが自分の信条。いただいたもので最善を尽くすのがいいこと」。大劇場に比べればいろいろと不便なことの多い八千代座。しかし、小さいからこそ得られる親密感、26年間温めてきた交流、そんな八千代座だからこそ、遊び心あふれる企画が生まれました。「映像と踊りは、きちっとシンクロするわけではないけれど、そこを楽しめるようにしたい。これは八千代座からできる、お楽しみの公演です」。

 

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 お客様を楽しませたい、わざわざ八千代座公演へ毎年通うお客様にも目新しいものをという玉三郎の意欲は、公演の隅々まで浸透していきます。「口上も含めて2時間くらいで終わるので、気楽に見られ、旅行で来て昼夕の両方をご覧になることもできるかなと思います」。ここでしか味わえない観劇体験、ぜひ、山鹿へ、八千代座へ足をお運びください。

 

 

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2017/07/30