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芝翫、橋之助、福之助、歌之助「吉例顔見世興行」での襲名披露を前に

芝翫、橋之助、福之助、歌之助「吉例顔見世興行」での襲名披露を前に

 

 

 12月1日(金)に初日を迎える、ロームシアター京都「當る戌歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」で、襲名披露を行う八代目中村芝翫、四代目中村橋之助、三代目中村福之助、四代目中村歌之助が、開幕を前にした心境を語りました。

芝翫、橋之助、福之助、歌之助「吉例顔見世興行」での襲名披露を前に

吉例顔見世興行で襲名披露ができる喜び

 お練りやまねき書きのニュースが届き、あちこちに吉例顔見世興行のポスターも飾られた京都。「(お練りでは)沿道に多くの方がいらっしゃってくださいましたが、京都のお練りがほかと違うなと思ったのは、顔見世興行が年中行事であるということ。観に行きますよ、と声をかけていただき、顔見世興行の人気度の高さを再認識いたしました。ポスターもたくさん飾っていただいてありがたいことです」と、芝翫はうれしさと感謝の気持ちを笑顔で表しました。

 

 南座の前で幼い頃、「ひとかどの役者になるよう勉強、努力するんだよ」と、父に言われた記憶のある芝翫にとっては、耐震工事で南座で公演ができないことに一抹の寂しさもあるとも言います。しかし、「そんな状況でも顔見世が京都でできる、だからこそ僕たちの襲名がある」と発想を逆転させ、ロームシアター京都での襲名披露に特別な思いを寄せました。「先週、劇場にうかがいましたが、たいへん素敵な舞台で、胸ときめく思いでした」。家族そろって襲名披露に向け、また一つスイッチが入ったと明かしました。

 

芝翫、橋之助、福之助、歌之助「吉例顔見世興行」での襲名披露を前に

京都の顔見世に対する特別な思い

 「ロームシアター京都に橋之助のまねきが上がる、それも兄弟三人一緒にまねきが上がるのがすごくうれしい。早く見たい」と気持ちを逸らせたのは橋之助。初日が近づき、役にかける思いも明確になってきました。「顔見世興行では、立役として僕が目指したい方向性の役ばかり。新しい橋之助のこういう路線を見たい、と思っていただけるよう一所懸命勤めます」。

 

芝翫、橋之助、福之助、歌之助「吉例顔見世興行」での襲名披露を前に

 福之助は顔見世興行初登場。初めて出演する『対面』で、「雰囲気や先輩方の息遣いを見られるチャンス。間近でいろんなものを吸収したい」と意気込み、『大江山酒呑童子』では女方を、「壱太郎のお兄さんに教わって勉強したい。父も若いときは女方をしていますし、これも経験」と、前向きに取り組む姿勢を見せました。

 

芝翫、橋之助、福之助、歌之助「吉例顔見世興行」での襲名披露を前に

 小さい頃からよく遊びに来ていたため、京都は懐かしい場所という歌之助も、顔見世興行の出演は初めて。「オールスターの憧れの舞台で襲名できるのがすごくうれしい。『酒呑童子』では2回目の女方、前回は慣れることしかできなかったけれど、今回はプラスできるように教わって頑張りたい」。

 

襲名披露で心に残った役は

 大きな劇場では最後となる襲名披露。これまでの出演では、歌之助は歌舞伎座の舞台で一人で踊った『芝翫奴』が思い出深く、8日間の出演でしたが、「1カ月やりたかった」と本音もこぼれました。橋之助と福之助が忘れられないのは『車引』の梅王丸と桜丸を兄弟でやったこと。切り株での二人の問答で、「なにか不思議な感じがしました」と福之助が言うと、橋之助は「編笠を上げ、だんだんお客様が見えて拍手してくださったとき、本当に気持ちよかった」と振り返りました。

 

 芝翫の心に残っているのは『勧進帳』の弁慶。若い頃に慕っていた初世辰之助(三世松緑)の顔見世興行での弁慶で(昭和56年)、「四天王という立役の大きなお役を初めていただいた。そのときの富樫が仁左衛門のお兄様。その同じ富樫と相対した弁慶の1カ月、大変でした。テクニックを山ほど教わり、深いトンネルの中に入ったときもありました。腹の中に血の涙をこぼすとはこういうことか、こういう経験をしないと弁慶になれないんだなと」。

 

芝翫、橋之助、福之助、歌之助「吉例顔見世興行」での襲名披露を前に

大きな財産を顔見世興行の舞台に

 ところが、翌月からの舞台で声の出し方が自然になったことに気づいたという芝翫。この一例に限らず、「襲名披露で先輩方と一緒に出させていただいたことは、いろいろな意味で僕の財産」と、この襲名披露の舞台で教えを受けた先輩俳優を一人ひとり挙げ、感謝を捧げました。

 

 橋之助も、「雲の上の憧れの人」の吉右衛門に梅王丸を教わり、先日は、父が襲名披露で勤めた『熊谷陣屋』を、仁左衛門に「手取り足取り細かくご指導いただき、泣くかと思うほどうれしかった」。いずれ父と同じ芝翫型でという思いが、「團十郎型もまた勤めさせていただきたい」と思うようになったと言います。受けた稽古はやはり「僕の財産」。

 

 襲名披露が始まって1年余、親子四人は歌舞伎俳優としての財産を蓄え、ひと回りもふた回りも大きくなって顔見世興行の舞台に臨みます。芝翫が「襲名披露のどこかでやらせていただきたいと思っていた」『渡海屋・大物浦』の知盛は、京都の顔見世興行では初めての上演となります。「苦しみや喜びが人情噺の醍醐味だと思うので」、『文七元結』の長兵衛は、50歳を過ぎて積み重ねてきたものが、世話物の味となることでしょう。ぜひ、劇場で親子四人の今の姿をご覧ください。

 ロームシアター京都 メインホール「京の年中行事 當る戌歳 吉例顔見世興行東西合同大歌舞伎」は、12月1日(金)から18日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2017/11/14