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コクーン歌舞伎『切られの与三』開幕を前に

コクーン歌舞伎『切られの与三』開幕を前に

 コクーン歌舞伎第十六弾『切られの与三』 前列左より、中村扇雀、中村梅枝、中村七之助、串田和美(演出・美術)/後列左より、中村萬太郎、片岡亀蔵、笹野高史

 

 

 5月9日(水)、渋谷Bunkamuraシアターコクーンで「渋谷・コクーン歌舞伎第十六弾『切られの与三』」が開幕します。前日には出演者と演出・美術の串田和美が開幕に向けての意気込みを語りました。

 「まさかの与三郎」でひさびさの立役に挑む七之助は、「立ち方をどうしたらいいんだろうとか、男っぽく演じなきゃいけないのかなと、いろいろ考えてしまいます。感情が入ってくるとそんなことはないのですが、そのエンジンがかかるまでが大変。女方ならギアも自在なんですけど、立役はエンストしやすい。難しいです」。これを聞いた演出・美術の串田和美は「謙虚におっしゃっていますが、素晴らしい与三郎ができ上ってきています」と笑顔を見せました。

 

初めての出演者を迎えて

 コクーン歌舞伎初登場の梅枝から、「皆さんに助けられながらここまで来ました」の言葉を受けて扇雀が、「皆さんを助けています。そういう立場になった気がします」と、貫録のひと言。同じく初登場の萬太郎が、自分を含めた講釈師の演出に、「かなりお客様もびっくりされるのでは」と言えば、常連組の亀蔵も「久しぶりにぶっ飛んだ感じになりそうで楽しみ」と続け、笹野高史はその初登場の二人に、「また出たいと言ってもらえる舞台に」と意気込みを語りました。

 

 梅枝と萬太郎が加わったことで、「二人に説明するために、あらためてコクーン歌舞伎ってなんだろうと思う機会が何度もあり、コクーン歌舞伎ならではの再発見がありました」と串田。七之助は女方を相手にすることで、「女方は歌舞伎にとっての貴重な宝。素晴らしい演出法なんだなとつくづく感じました」と感心した様子を見せ、新しく迎えた出演者はさまざまな意味で気づきをもたらしたことがわかりました。

 

『切られ与三』を『切られの与三』にする難しさ

 上演機会も多い古典で、名優たちの工夫がたくさん詰まった芝居だけに、与三郎もお富も「イメージが強烈なので、(演じ方を変えることに)葛藤がある」と七之助が明かすと、梅枝も「イメージから脱却するのが大変。美しくしていくと歌舞伎に寄ってしまうので、その塩梅をどうするかが難しい」。萬太郎は「本当によくできている作品。それは先人たちがつくってきた結果だと思うので、我々が今、そこに甘んじていてはいけないと思います」と、立ち向かっていく姿勢を見せました。

 

 さらに、串田は「よく知られた場面と、まるで知らないところが混ざっているものをつくることの難しさ」を挙げたうえで、そのことが稽古で意識的な再確認や発見、創作につながり、「誰もやったことのない与三郎ができているのじゃないか」と自負を見せました。七之助は、「どういうふうに与三郎が人生を歩んできたか。一人の人間を演じようと思ってやっています」と、今回の明確なテーマを掲げました。

 シアターコクーン「渋谷・コクーン歌舞伎第十六弾『切られの与三』」は5月9日(水)から31日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹ほか、Bunkamuraチケットセンター、オンラインチケットMY Bunkamuraで販売中です。

 

コクーン歌舞伎『切られの与三』開幕を前に
コクーン歌舞伎『切られの与三』開幕を前に

 東急田園都市線渋谷駅地下2階に現れた特大ポスター。5月13日(日)まで掲出、ぜひご覧ください!

2018/05/09