新橋演舞場五月大歌舞伎 会見

新橋演舞場五月大歌舞伎会見

 初夏の新橋演舞場を飾る公演として昨年から始まった「五月大歌舞伎」。吉右衛門を中心とした華やかな顔ぶれに、今回は富十郎が加わり、歌舞伎の醍醐味と魅力が満載の演目が並びます。

 3月16日、公演に先立ち記者取材会が行われ、吉右衛門、芝雀、歌昇、福助、信二郎(錦之助)、染五郎ら出席者が意気込みを語りました。

 

中村吉右衛門―――

中村吉右衛門

 新橋演舞場での五月大歌舞伎、このように2年続けてやらさせていただけます事は、本当に有難いことで、こんなに嬉しいことはございません。

 第1回目の時に、「2回目からは段々腰を引いて、私は“冠”というような形に、と思っております。」と申しましたが、今回もしゃしゃり出て後ろめたいのですけれど(笑)。

 何と申しますか、前回の公演では、一つの目標に向かって皆で走ったような、本当に清々しい気持ちになりました。それが、“チームワーク”というものにも繋がっていくのではないかと思っております。今回も今からワクワクした思いでございます。

中村芝雀―――

中村芝雀

 昨年に引き続き、この五月の演舞場公演にご一緒させていただきます事、この上ない喜びでございます。

 今回、昼の部では『鳴神』雲の絶間姫、『釣女』上﨟、夜の部では『法界坊』の娘おくみをさせていただきます。どのお役も大きなお役です。五月に向けて時間をかけて役にとりくみ、初日を磐石な状態で迎えたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

 

中村歌昇―――

中村歌昇

 毎月毎月、大事に一生懸命勤めていけたらと思って過ごしておりましたら、あっという間に一年が過ぎ、今年も五月の演舞場に出させていただきます。

 昼の部では『鬼平犯科帳』小房の粂八、『釣女』太郎冠者、夜の部では『法界坊』若党五百平を勤めます。太郎冠者は何度かやらせていただいた役ではありますが、少しでも進歩していればと思っております。

 

中村福助―――

中村福助

 去年は、吉右衛門のお兄さんと同じ舞台に出させていただいていないんです。今回はご一緒のお芝居を昼も夜も。すごく楽しみです。
 『妹背山』のお三輪は歌右衛門のおじさんに教えていただき、初演を演舞場でやらせていただいたお役で、稽古場での楽しい思い出を昨日のことのように思い出します。

 私事ですが、成駒屋が東京に出てきまして、今年でちょうど200年目。その時の中村座での出しものが、はからずも『法界坊』。今回、渡し守に出させていただきますのも、因縁でございます。
 新しい劇場なのに、演舞場には大正年間・明治年間の雰囲気が受け継がれていて、ハイカラな感じがします。お客様にも親近感を味わえて、私も楽しみです。

中村信二郎―――

中村信二郎

 五月には信二郎から、錦之助になっております。錦之助の襲名後、初のお芝居が吉右衛門のお兄さんとご一緒でき、錦之助という名前にとっても大変嬉しいことです。

 演舞場という劇場には、ずっと出続けてきたスーパー歌舞伎の思い出が、楽屋の隅々にまでたくさん残っています。劇場の大きさ、舞台の大きさ、お客様との距離、どれも大変好きで、とても楽しみにしています。

 

市川染五郎―――

市川染五郎

 今回序幕の『鳴神』で、歌舞伎十八番の演目を芯のお役として初めてやらせていただきます。十八番を勤めるのは有る意味で義務、出来なきゃいけない立場です。初めてだからということを抜きにした評価をしていただけるように、吉右衛門の叔父に教えていただき、これを始まりとして、どんどんやっていきたいと思っています。

 演舞場は初めて代役をした思い出のある劇場です。今までいろんなお芝居に出させていただいていて、何か懐かしい感じを受けます。この演舞場の五月歌舞伎公演が大事に大事に育っていけばと思っています。

演舞場五月大歌舞伎をどのように育てていきたいか―――

吉右衛門―――
 若い人たちが活躍できる場を作りたい、そして、アンサンブルのとれた、播磨屋の芸・初代吉右衛門の舞台に対する姿勢や考え方が流れているグループを作り上げられたらなあ、というのが一番の目的です。
 そこで、若い方たちが主役をし、アンサンブルの中でさらに力を発揮できるように。ですから私なんかが、全て前面に出るというよりも、若手・中堅の方たちが活躍できるものになっていったらいいなあ、と思っております。

新橋演舞場五月大歌舞伎会見『法界坊』は10年ぶりということですが―――

吉右衛門―――
 演舞場での『法界坊』、私にとりまして、大変深い思い出がございまして、私がまだ中学生くらいの頃、先代の勘三郎のおじさまが演舞場で『法界坊』をやられて、その時、野分姫で出ささせていただいたんです。
 線が細かったものですから、わりと女方をやらさせていただいたのですが、ちょうど反抗期もありまして、“女方なんてやだ”という思いがあって、野分姫の花道の出の時にシナも作らなきゃ、なんにもしないで、タッタタッタ歩いて出て・・・中村屋のおじさまに怒られました。
 でも今考えると、いい勉強させていただいたなあと思います。あの頃、おじさまに絡ましていただいたお陰で、今でも眼に残っておりますし。そして、今回演舞場で、甥っ子の染五郎が野分姫という、なにか因縁めいたものを感じております。 

 昼の部では池波正太郎の原作を歌舞伎の世界に仕立て、吉右衛門が長谷川平蔵を演じる『鬼平犯科帳』も大きな話題の一つ。

 趣向をこらした舞台が目白押しの新橋演舞場「五月大歌舞伎」。是非ご期待ください。

2007/03/22