10月三越歌舞伎 澤瀉屋一門記者会見

三越劇場創立80周年記念公演『傾城反魂香』

 三越劇場10月公演は、三越劇場創立80周年記念公演と銘打ち、市川猿之助門下・澤瀉屋一門による『傾城反魂香』が上演されます。

 昭和45年(第5回春秋会)、60年(南座)に市川猿之助が復活上演した際の脚本・演出をもとに、おなじみの「土佐将監閑居の場」の前段として、なかなか上演されることのない「近江国高嶋館の場」と「館外竹薮の場」が加わります。

 昭和2年(1927年)日本橋三越本店の本館6階に三越ホールとして開場し、本年で創立80周年を迎える三越劇場。その記念公演にむけ、スーパー歌舞伎など新しい歌舞伎を市川猿之助とともに作ってきた補綴・演出の石川耕士と、市川右近、市川笑也、市川猿弥、市川笑三郎、市川春猿、市川段治郎ら出演者たちが意気込みを語りました。

補綴・演出 石川耕士―――

補綴・演出 石川耕士

 猿之助さんは卒論も近松門左衛門というくらい近松が大変お好きですが、私も昔から近松ファンで、この『傾城反魂香』もとても大好きです。

 昭和45年、第5回春秋会では、上の巻を全てなさったんですが、昭和60年、京都南座での再演時には、上の巻の前半は割愛して、「土佐将監閑居の場」に「近江国高嶋館の場」をつけるという形で上演されました。これらの公演を別にいたしますと、長期の本公演で、「土佐将監閑居の場」の前が上演されるのは初めての事です。

 猿之助さんはどのお芝居でも、時代のテンポというものに合わせなきゃいけない、とおっしゃります。今回も以前のビデオを見て、「長いでしょ、退屈でしょ、どんどん運んでいくようにしてくださいね」と。

 将監閑居に繋がる“虎”の事など、「近江国高嶋館の場」を付けることで、非常によくお分かりいただけるようになりますが、ただ筋が分かるというだけでは、無味乾燥なものになってしまいます。ここでは歌舞伎らしく、人の入った“虎”を登場させ、義太夫の太棹の三味線の音にあわせていろんな立ち回りや芸をさせて、とても面白い場面にしています。

市川右近―――

市川右近

 80年という長い歴史に育まれた三越劇場に初めて出演させていただきます。諸先輩が汗を流してこられたこの舞台に、師匠猿之助のもと、一同が会して公演を持てます事、本当に有難く思っております。

 初めて浮世又平を演じさせていただきますが、師匠の型をしっかりと受け継ぎ、それをさらに次の世代に伝えていくのが役目だ思っております。

 お客様に、生きていく勇気を少しでも感じ取っていただけるよう、懸命に演じてまいる所存でございます。

市川笑也―――

市川笑也

 狩野四郎二郎元信役をつとめさせていただきます。
 今回は女方ではなく、立役をさせていただきます。

 

市川猿弥―――

市川猿弥

 私は、昨年に続いて三越劇場は2度目の出演になります。久しぶりに市川猿之助一門でまとまり、しかも近松の歌舞伎。すごくプレッシャーも大きいんですが、猿之助一門に任せてよかったと言っていただけるように、一生懸命に勤めようと思っております。

 

市川笑三郎―――

市川笑三郎

 私も昨年に引き続き、2度目の三越歌舞伎になります。世の中には色々な苦難を乗り越えていらっしゃるご夫婦がいると思いますが、このお芝居、そういった皆様が元気を感じていただけるお芝居だと思っております。

 女房おとくを澤瀉屋型で勤めます。音羽屋型や他の皆様がなさるやり方とも違っており、このやり方がとても好きです。

 私はまだ未婚でございますけれど、こんな奥さんがいてくれたらいいなというイメージを持って勤めさせていただきたいと思っております。

 


市川春猿―――

市川春猿

 子供の頃、三越歌舞伎を見に来た記憶がございます。まさかその時は、この三越歌舞伎に出させていただけると思っておりませんでしたが、このように歴史のある三越歌舞伎に出させていただける事、そしてこういう古典歌舞伎をきっちりと勉強させていただける事は、私達にとって、とても有難いことだと思っております。

 一生懸命、毎日全力投球で舞台を勤めることが、この機会を与えてくださった方々、応援してくれるお客様に対してできる恩返しではないかと思っております。

市川段治郎―――

市川段治郎

 狩野雅楽之助を演じさせていただきます。今回は、めったに上演されない「館外竹薮の場」で、大立ち回りをさせていただきます。臨場感溢れる三越劇場の舞台で、迫力のある立ち回りをお見せすることができればと思っております。

 私も昨年に続き2度目ですが、昨年の初日、「車引」の松王丸で出る前に、持っている傘で大道具を壊してしまいまして…今回はそのようなことの無いようにと思っています。


三越劇場の印象について―――

右近―――
 昔の江戸時代の芝居小屋のように、役者の息も感じていただけるし、お客様の息も感じられる、観客席と一体化できる空間ではないでしょうか。それに、西洋と東洋の融合みたいなものを感じるんです。非常に楽しみです。

猿弥―――
 三越劇場はお客様とも近いし、素敵な空間ですね。そこで、今回のような丸本歌舞伎、素敵な舞台になると思っています。

笑三郎―――
 裸舞台を拝見していると、こんな小さなところでお芝居が出来るのかなと、思っていたんですが、実際にセットを組んで、舞台に立ってみますと、意外に狭さを感じません。

 むしろ、広い劇場ですと、会話していても離れていなくてはいけなかったりするんですが、そういう事もなく、自然に隣同士で会話ができたりする。演技ということを意識しなくても、自然にお芝居をさせてくれる、そんな劇場だなと思います。

 市川猿之助門下・澤瀉屋一門が古典の名作に取り組む『傾城反魂香』。創立80周年の歴史ある三越劇場での舞台が今から楽しみです。


公演情報は こちらをご覧ください。
三越劇場ホームページ

10月三越歌舞伎 

2007/09/14