亀治郎 記者取材会

 1月「新春浅草歌舞伎」、2月博多座「二月花形大歌舞伎」に出演する市川亀治郎が記者取材会をひらき、舞台への意気込みを語りました。

博多座「二月花形大歌舞伎」記者取材会

 平成19年は大河ドラマで1年間舞台を離れる機会が多かったのですが、1年ぶりに古典歌舞伎で浅草に帰って参ります。全て初役です。

 2月は「浅草以外で“やりたいやりたい”」と言い続け、ようやく浅草のメンバーで博多座に呼んでいただける事になりました。浅草でご好評いただいた『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』を再演できることも非常にうれしく、また久しぶりに気心知れた仲間と芝居が出来ることも楽しみにしております。

 『傾城反魂香』では、おとくで出させていただきます。伯父の猿之助が又平の時に、今の勘三郎さんが、おとくで出てらっしゃったので、今回はその逆バージョンのように、勘太郎くんが又平で私がおとく。とても良いコンビになるだろうと思っていて、僕自身も楽しみにしています。

 『金閣寺』では、雪姫を勤めます。11月に巡業で勤めた『奥州安達原』の袖萩のように、激情にかられる女性にくらべると、しどころが少なくて、そこが一番難しいのだと思います。これは、京屋(四代目雀右衛門)のおじさんに習います。自分の役者としての財産を増やしていただくことが出来るので、大変感謝しております。

 『弁天娘女男白浪』では、忠信利平を勤めます。先輩方もそうしていらっしゃいますが、若い頃は、立ち役も女方もいろんな役を勉強しなきゃいけない。この浅草のメンバーは、そういう意味で守備範囲がわりと広い人たちばかりだと思うんです。1日のうちで、全然違う役をやるというのも歌舞伎のひとつの面白いところ。観客の人にも喜んでいただけるのではないでしょうか。

 博多座は、本当にすばらしい劇場だと思います。やはり浅草は、劇場という意味では少し制約があるので、今回博多座という“歌舞伎劇場”で出来ることになって、本当に嬉しく思います。開演時間も、浅草同様11時と3時15分にしました。例えば主婦の方でしたら、ご主人が会社から帰ってくる時間には帰れる設定ですし、東京からも日帰りでも帰れるように工夫しています(笑)。

 『蜘蛛絲梓弦』は再演ですが、僕は絶対に同じようにはやらないので、浅草とはまた違ったものをお見せできると思っています。『義経千本桜』もあるし、歌舞伎十八番物や荒事もあり、それに舞踊が2つ。『団子売』は江戸の風俗に題材をとった、歌舞伎独特の本当に良い作品だと思うし、『高坏』は古典にあるものですが、それを作り替えて新しいアプローチで見せていて、同じ舞踊でもそれぞれ見せ方が違っています。それぞれ非常に良い演目が揃っていると思います。

大河ドラマでの経験―――
 改めて舞台は体力がいるなって思いました(笑)。スポットライトの暑さだったり、1~2時間の連続した緊張感だったり、共演者との毎日違う息の掛け合いだったり。そういう意味で、体力も使うし、集中力も必要だし、気力も使うし、改めて舞台の大変さというのが判りましたね。

 今回大河ドラマに出演して、最も得た物と言えば共演者との交流だと思います。そこから、また新たなものが生まれると思います。4月に上演する『風林火山』も、千葉真一さんという大先輩との交流から生まれました。交流を通じて新しいものができるといのは有難いですね。

 ただ、テレビは取り直しも効くし、そういった安心感があるのですが、舞台は本当に一発勝負で、お客さんによって左右される部分が大きいんです。お客さんの雰囲気で盛り上がったり、今日はちょっと・・・とか、そういう場の雰囲気がすごく影響する。舞台は役者だけじゃなくて、お客さんによって作ってもらうという事が改めて良くわかりました。

 これからも、映像の仕事も舞台と同様やっていきたいと思っていますが、自分のやりたい事と、当然歌舞伎役者ならやるべき事、それらを見極めて、進んでいきたいと思っています。やりたいことばかりやっていてはいけませんから、バランスよく。もちろん古典の継承という事もとても大事です。

 11月の巡業のあと、「風林火山を見て初めて歌舞伎見ました」という方の声を沢山いただきました。歌舞伎を知らない方が見に来て、歌舞伎ってこんなにわかりやすかったんですね、とか、こんな感動するもんだと思いませんでしたって。しかも年齢層が7歳の子供からおじいちゃんまで。ああ、これで大河に出た意味があったなってね、やっぱり歌舞伎に結びつけてほしいしですから。

博多座「二月花形大歌舞伎」記者取材会

浅草への思い―――
 浅草の思い出といえば、今のメンバーになる前、1999年に『寺子屋』の千代と『鳴神』の雲の絶間姫をやらせていただいて、それが大きいお役を先輩に習って勤めるという始まりだったんです。芝翫のおじさんに習ったのですが、大役をやるのも初めてだったし、そこが一つの出発点だったという気がしています。

 浅草に出ていなかったら、これほど大役をやらせていただく機会もなかったと思います。そういう意味で大役に挑戦することができて、ある程度の役が来てもさほど動じなくなった、ということはとても大きいと思います。5役を立て続けにやったことありますし、強靱な体力も得られたし、集中力も得られたし、本当に鍛えられたと感じています。

 11月の巡業で梅枝君とご一緒しましたが、ひとまわり(12歳)違いました(笑)。僕らも二十歳の頃から浅草で勉強させてもらっていたので、彼らの事を考えると、これからは次の世代が主役を勤め、僕らはサポートできる役で支えていけたらいいなとも思っています。芝居は1人ではできないから、次の世代を盛り上げていくのも大事な事だと思っています。

公演情報はこちらをご覧ください。
1月浅草公会堂「新春浅草歌舞伎」
2月博多座「二月花形大歌舞伎」

2007/12/09