歌舞伎座さよなら公演古式顔寄せ手打式

 1月2日、歌舞伎俳優、スタッフ、興行関係者ら総勢200名が歌舞伎座の舞台に勢揃いし、「歌舞伎座さよなら公演古式顔寄せ手打式」が行われました。

 「顔寄せ手打式」は、興行の諸取り決めが定まったしるしとして、座元と出演俳優が揃って手を締める、芝居の世界における古くからの吉例行事です。昭和26年1月3日、現在の歌舞伎座の開場式の折にも、「寿初開場手打式」が行われました。

 最近では「歌舞伎座百年祝賀 古式顔寄せ手打式」(昭和62年11月26日開催)、「松竹百年 古式顔寄せ手打式」(平成6年11月26日開催)などが行われましたが、この度は14年ぶりの開催となりました。

 定式幕があくと、歌舞伎俳優、演奏家、スタッフら総勢200名が舞台上に勢揃い。その壮大で厳粛な雰囲気に、約1800名の来賓が一斉に息を呑みました。

 はじめに河竹登志夫氏による「狂言名題披露」が行われ、引き続き、松竹株式会社 安孫子正演劇本部長専務取締役より、大道具、小道具、衣裳、かつら、立役床山、女方床山、照明の各担当責任者に、それぞれ附帳(その興行に必要な品目を書き出したもの)を手渡す「附帳渡しの儀」のあと、鴨志田頭取の音頭により舞台上関係者の手締めとなりました。

 その後松竹株式会社会長大谷信義が、「121年の伝統と歴史を育んでまいりました歌舞伎座が、来る平成22年4月の興行をもちまして、改築のためしばらくの間休場し、当月から向こう16ヶ月にわたりまして、さよなら公演を興行する次第となりました。

 本日の顔寄せを皮切りといたしまして、全力をあげまして、歌舞伎座に相応しい舞台を作ってまいる所存でございます。どうか、当座のさよなら公演に絶大なるご協力をお願い申し上げます。」とご挨拶。

 引き続き社団法人日本俳優協会会長中村芝翫丈より、「この歌舞伎座がいよいよ改築されることになりまして、感無量でございます。私たち俳優にとりましても、この歌舞伎座は特別の劇場でございます。この檜舞台を踏むことが最高の誇りであり、この舞台こそ私たちの芸の心のよりどころでございます。

 歌舞伎座は明治22年から今日に至るまで、121年の長きにわたり、歌舞伎の中心でございました。私たちの先輩たちは、この劇場で伝統を正しく受け継ぎながら、新しい時代に相応しい作品を創造し、歌舞伎を世界に誇る舞台芸術にまで育て上げました。今では、世界中で歌舞伎が高く評価されるようになり、この歌舞伎座も世界の歌舞伎座になりました。

 その歌舞伎座が来年には改築されます。お客様にとりましても、私たちにとりましても、やはり名残惜しい事でございます。想い出は到底語り尽くす事のできる事ではございません。今は、来年4月までの歌舞伎座さよなら公演の舞台を、一つ一つ心を込めて勤める所存でございます。

 お客様におかれましても、ぜひともさよなら公演にお運びいただき、この歴史ある劇場の良さを味わっていただきたいと存じます。そしてまた、数年後にさらに素晴らしい劇場となって、華々しく開場される日を心待ちになさって下さいませ。私たちもその日を楽しみに、毎日の修行に精進して参りたいと存じております。」というご挨拶を頂きました。

 そして、松竹株式会社社長迫本淳一が、「歌舞伎の殿堂として長らく皆様にご愛顧いただいておりました歌舞伎座も、いよいよさよなら公演を迎える事となりました。この歌舞伎座に皆様方もさまざまな想い出がおありになることと拝察いたします。

 私ども松竹株式会社といたしましても、多くのお客様それぞれの想い出を大切にお預かりいたしまして、この後さらなる歌舞伎座の発展に全力をつくして参る所存です。

 皆様におかれましても、歌舞伎座さよなら公演に、ご贔屓ご後援の程賜ります事、お願い申し上げますとともに、歌舞伎ならびに歌舞伎関係者一堂、末永くご厚情とご支援とを賜りますよう、心よりお願い申し上げます。」とご挨拶したあと、坂田藤十郎丈の音頭で客席の来賓と一緒の手締めが行われました。

 手打式のあとは、記録映像「歌舞伎座を彩った名優たち」が上映され、歌舞伎座が育んだ名優達を偲びました。

 最後に、中村芝翫、坂田藤十郎、中村富十郎の人間国宝三人による舞踊「老松」が披露され、歌舞伎座さよなら公演の開幕と新年を寿ぎました。


【公演情報】
歌舞伎座さよなら公演 壽初春大歌舞伎
歌舞伎座さよなら公演 二月大歌舞伎
歌舞伎座さよなら公演古式顔寄せ手打式

2009/01/06