幸四郎 写楽と対面-「写楽 幻の肉筆画」展のお知らせ

「写楽 幻の肉筆画」展のお知らせ

▲ 東洲斎写楽:「四代目松本幸四郎の加古川本蔵と松本米三郎の小浪」
サイズ:一辺の長さ17.5(cm)/年代:寛政7年(1795)/所蔵:ギリシャ国立コルフ・アジア美術館

 7月4日(土)~9月6日(日)江戸東京博物館で、「写楽 幻の肉筆画」が開催されます。

 2007 年に世界遺産に登録されたギリシャ・コルフ島にある国立コルフ・アジア美術館には、ウィーン駐在ギリシャ大使のグレゴリオス・マノス氏が、19世紀末から20世紀初頭にかけて、ジャポニズムに沸くパリとウィーンで購入した1万点以上におよぶ美術が所蔵されています。

 そのコレクションは 1 世紀のあいだほとんど人の目に触れることがありませんでした。しかし、2008年7月に日本の研究者による大々的な学術調査が行われ、謎の浮世絵師、東洲斎写楽による肉筆扇面画が発見されました。これは写楽が版画での活動を終えた後の 1795年(寛政7)5月に描かれたものとみられ、従来の写楽研究に大きな影響を与える大発見となりました。

 発見された扇面画には『仮名手本忠臣蔵』二段目から、四代目松本幸四郎が演じる加古川本蔵と、松本米三郎による本蔵の娘・小浪が描かれ、写楽の署名と花押も見られます。真筆と確認されている写楽の肉筆画が一般に公開される、世界で初めての展覧会「写楽 幻の肉筆画」での一般公開に先立ち、九代目松本幸四郎が写楽の肉筆画と対面し、思いを語りました。

 あまりにも素晴らしいので、ご先祖様が描かれている事を暫く忘れて見とれていました(笑)。

 写楽の版画は何度か拝見しており、線の力強さに魅力を感じておりましたが、肉筆画ではその色彩の繊細な美しさにも驚いています。素晴らしい絵は、ただ美しい、ただ綺麗というだけではなく、もう一つ上の感動を人の心に与えます。これだけの驚きと感動とを与えてくれた写楽の肉筆画に胸が一杯になりました。そして、この絵が地中海で発見されたという事も、実に写楽らしくて素敵ですね。

「写楽 幻の肉筆画」展のお知らせ

 素晴らしい絵は何百年という時の流れも美にしてしまうのですね。本当に良い古い物の良さが判る人は、新しい物も判ります。そういう人々が日本の現在に残る良い物をずっと持ち続け、伝えてくれたのです。歌舞伎という歴史のある演劇に携わっている自分はいつもそう思っています。

 我々役者の芸は、一瞬で消えてしまう物です。この四代目松本幸四郎を描いた役者絵は、そうした一瞬、そして当時の生々しい時代を今に伝えています。その一瞬の、夢や苦しさ、切なさ、寂しさのようなものが全てこの作品に含まれているように感じます。そして、この絵を拝見し、俳優として人間として、自分もこれからもっと頑張らなくてはという気持ちが沸き上がってきます。

 マノスコレクションには写楽の肉筆画の他、喜多川歌麿、葛飾北斎などの新出の浮世絵版画、江戸城本丸にあったといわれる狩野探幽の屏風の摸本(原寸大)など絵画作品も次々と確認され、ギリシャに眠る秘宝の全貌が明らかになりました。「写楽 幻の肉筆画」展はこうした調査の成果を紹介するもので、膨大なコレクションから浮世絵、絵画など約 120 件が出品されます。ぜひ、お楽しみに。

2009/06/06