幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見

幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見

▲ バースデイケーキを前に、前列左から水野美紀、松本幸四郎、高橋惠子。後列左から瑳川哲朗、小澤征悦、渡辺いっけい

 10月日生劇場では、『カエサル -「ローマ人の物語」より-』が上演されます。舞台の原作となる「ローマ人の物語」(新潮社刊)は、1992年より15年にわたって刊行された、塩野七生渾身の大ロングセラー作品。ローマの建国から滅亡までという、古代ローマ史を一人で描いた作品としては、日本にも世界にも他に例を見ない空前絶後の大長編シリーズです。中でも、塩野七生の最も愛する英雄ユリウス・カエサル(英語名:ジュリアス・シーザー)を描いた、「ユリウス・カエサル ルビコン以前」と「ユリウス・カエサル ルビコン以後」の2巻は、その生涯の全貌を鮮やかに描き出した、シリーズの頂点をなす作品として人気を集めています。

 今回の初舞台化で人間的魅力に溢れる英雄カエサルを演じるのは、松本幸四郎。ジャンルを超えて常に新たな挑戦を続けてきた幸四郎が、唯一無二の英雄像を創り出します。8月19日、公演に先立ち製作発表が行われ、スタッフ、出演者が公演への想いを語りました。

齋藤雅文 (脚本)
幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見 "カエサル"はカルタゴの言葉で"象"を意味するそうです。カエサルという歴史上の巨大な人物は、まるで象のように、見上げ、あるいは牙や鼻に触れ、あるいはつぶらな瞳を見て・・・見る人によっていろんな一面を見せる巨大な存在だと思っています。

 僕にとっては塩野七生さんの「ローマ人の物語」全15巻はもう一つの巨大な象となりますが、カエサルという巨大な象の謎を解く、情熱的な人々の物語になるような脚本を創りたいと思っています。


栗山民也 (演出)
幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見 古代の人達の本当に巨大な情熱のエネルギーを今とても強く感じています。それはきっとその人たち自らが、自分たちの運命に対して真剣に問い続けるという、誠実な立ち位置を持っていたからではないでしょうか。

 等身大では決して描けないキャラクターや世界観を、出演者・スタッフの皆様の力を借りて、そして演劇の想像力の広がりでさらに大きなドラマにしていきたいと思います。とてつもなく遠いところへ旅する気分で頑張っていきたいと思っています。


松本幸四郎
幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見 先日、ローマで塩野七生さんからいろいろなお話を伺い、歴史上の英雄カエサルではなく、人間ユリウス・カエサルの姿がだんだん見えてまいりました。頭角を現したのは40歳過ぎ、生まれも名家とはいえず、女性に弱く、借金だらけ・・・そういうお話を伺うにつれ人間カエサルがどんどん好きになってまいりました。

 実は大正14年に私の祖父の七代目幸四郎がジュリアス・シーザーを勤めており、調べるにつれ新しい発見も沢山出てまいりました。齋藤さんの脚本、栗山さんの演出、素敵な出演者の方々に囲まれて勤める舞台、ぜひ多くの皆様にご覧頂きたいと思っています。


小澤征悦
幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見 ブルータスをやらせていただきます。カエサルと対立しながらも、心のどこかで男としてどんどん惹かれていくという微妙な役柄です。今回の舞台ではそうした揺れを少しでも表現できれば良いなと思っています。

 台本には"寛容"という言葉が多く出てきますが、人間を受け止める力、器の大きさが"寛容"だとすれば、それはカエサルを指し、私の中ではカエサルを演じる幸四郎さんのことを指しているように感じられます。幸四郎さんだからこそ演じることができるカエサルを今から楽しみにしています。


瑳川哲朗
幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見 このような大作に出演させていただくことを、大変に光栄に思っております。そして、尊敬する幸四郎さんや高橋惠子さん、若い旬の俳優の方々とご一緒できるのも大変な楽しみの一つでございます。

 台本を読み、ギリシャ、ローマから始まった民主主義の根本、さらに今の日本の政治体制についても考えさせられました。今度のお芝居は政治と人間という意味でも非常に興味深く観ていただけるのではないでしょうか。


水野美紀
幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見 アリスという、高橋惠子さんが演じるセルヴィーリアの召使いをやらせていただきます。役作りということで、高橋惠子さんには、稽古場から私に何でも言いつけていただければと思っています(笑)。

 どの時代でも人の心を掴むのはカエサルのように、常に強くぶれない信念を持っている人、人に対して深い愛を持っている人ではないでしょうか。初めての日生劇場で、カエサルを演じる幸四郎さんとご一緒させていただける、本当に今、身の引き締まる思いです。


渡辺いっけい
幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見 演じますキケロは頭が良い人なのですが、カエサルの才能を良く理解し、そのカリスマ性に翻弄されていくという役どころですので、親しみやすく、お客様に近い所に居られる存在だと思っております。精進して本番までに何とか掴みたいと思っております。

 地下鉄の駅構内などに、とても大きなポスターが貼られていてインパクトがあるようで、友人からも非常にかっこ良いと言われ、とても嬉しく思っています(笑)。ローマ時代の話ですが、今を生きている人達へのメッセージも沢山詰まっていると思いますので、その辺も楽しんでいただきたいと思います。


高橋惠子
幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見 とても今、身の引き締まる思いでございます。日生劇場は、いつか立ってみたいと思っていた劇場ですし、紀元前のお芝居というのも初めてです。そして愛人であり、母親であり・・・年を重ねてこういう役に出会えるのはとても幸せなことだなと思っております。豊かな女性の色々な面が出せたら良いなと思っております。

 この時代を生きていた人のエネルギーがとても大事かなと思っておりますので、しっかりと体力をつけて、色々な思いを自由に出せるような状態で舞台に臨みたいと思っております。とても壮大なスケールのドラマですが、心の機微が観ている方にしっかり伝わるように心掛けたいなと思っております。

幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見

塩野七生 (原作)コメント
 「私は私で、自分がこうと思うカエサルを書きました。しかし私が書いたカエサルだけがカエサルではありません。ですから幸四郎さんもご自分に忠実に、ご自分の想いに忠実に演じていただきたいと思います。日本には人間国宝というものがありますが、カエサルという人は、たとえて言うなら〝人類の世界遺産〟です。歴史上の「主役中の主役」です。これまでずっと主役を演じ続けてきた松本幸四郎さんが、そのカエサルを演じるというので、私も大変楽しみにしています。」
会見のために寄せられたコメントとともに、ローマを訪れた幸四郎との写真も紹介されました。

幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見

幸四郎
 6月にローマを訪れ、カエサル生誕の場所、演説した場所、暗殺された場所、そして火葬に付された場所などを見てまいりました。現地の空気、風土に触れることで作品への思いもより強くなり、今はカエサルをとても愛おしく感じております。

 ローマでは、塩野さんにとても多くのことを伺いました。そのエネルギーとバイタリティーには平伏いたします。ご案内していただく中で、「いつの時も人間というものは、苦しみ、悲しみに耐えうる生きものであり、それに慣れることのできる生きものだ」という言葉を伺いました。カエサルはルビコン川を渡るという決断をしますが、そのときも人間に耐えられない不幸はないということを信じていたのでしょう。

 ユリウス・カエサルという人物は、何事についてもポジティブな生き方をした人、本当に魅力のある男、うぬぼれではない、本当の意味で自分に自信のあった人なのだと思います。

 僕は本当のリーダーというのは、忠臣蔵の大石内蔵助のように、四十六人の浪士一人ひとりを生かしてあげた、一人ひとりの人生をまっとうさせた人のことではないかと思います。自分の部下に愛情を注ぎ、あるときは厳しく、あるときは冷静に、あるときは優しく、その人達の人生を歩ませてあげることができる人。カエサルには本当の英雄の姿というものを感じます。

 会見の後、当日(8月19日)誕生日を迎えた幸四郎にサプライズでバースデイケーキが贈られました。
 出演者らから祝福を受けた幸四郎は、「65年役者をしていて、誕生日はいつも仕事場におりますから、このような製作発表の場で誕生日を迎えるのも自分に相応しいかと思います。こんなに素晴らしい誕生日をしていただいたからは、この『カエサル』というお芝居を、皆様方と一緒に、素晴らしい舞台にしたいと思います。それが、今日の誕生祝いの、何よりのみなさんへの御礼だと思っております。」と挨拶しました。

 

幸四郎 『カエサル -「ローマ人の物語」より-』製作発表記者会見

2010/09/01