日生劇場にて十二月大歌舞伎が上演されます~日生歌舞伎通信Vol.1

日生劇場にて十二月大歌舞伎が上演されます

▲ 右から菊五郎(合邦道心)、菊之助(玉手御前)、松緑(僧集慶)、時蔵(青衣の女人)

『摂州合邦辻』を通して上演―――

 12月の日生劇場で上演される『摂州合邦辻』は、序幕「住吉神社境内の場」から、大詰の「合邦庵室の場」までを通して上演致します。「合邦庵室の場」は単独でたびたび上演されますが、通し狂言では、玉手御前が継子の俊徳丸に道ならぬ恋をして後を追い、「合邦庵室」の悲劇に至るまでの背景と経緯が詳しく描かれます。クライマックスとなる「合邦庵室」で娘、玉手の恋の謎が解き明かされる時、父、合邦の激しい怒りは深い悲しみへと変わるのでした。物語のはじまりから通してご覧いただくことで、『摂州合邦辻』の主題をより深く理解して頂けることでしょう。

 今回、玉手を演じる菊之助は、今年5月の大阪松竹座で上演された「合邦庵室の場」で初めて演じ、好評を博しましたが、今回は父、菊五郎初役の合邦道心、東蔵のおとく、時蔵の羽曳野、松緑の奴入平という豪華配役で、通し狂言に挑みます。

 『摂州合邦辻』は安永2年(1773)に人形浄瑠璃として初演されました。その後、歌舞伎にもなりましたが、明治後期に五世中村歌右衛門が「合邦庵室の場」を復演するまで、上演が途絶えていました。通しての復活上演は、昭和43年(1968)の国立劇場で、玉手御前を勤めたのは菊之助の祖父、七世尾上梅幸。この通し上演は、人形浄瑠璃初演以来のものともいわれ、大いに話題となりました。

 この一年を締めくくるにふさわしい、古典の名作狂言に期待が高まります。

平城遷都1300年記念に『達陀』を上演―――

 『達陀』は、毎年3月に行われる、奈良東大寺二月堂のお水取り(修二会)を題材に、昭和42年2月歌舞伎座で、二世尾上松緑(藤間勘齋)が振付を施し初演した作品です。東大寺に伝わる、僧・集慶と青衣の女人の伝説を取り入れた前半部から、集慶と大勢の練行衆によるダイナミックな群舞が圧巻の「二月堂内陣の場」まで、見どころに富んだ舞踊作品です。今回は、当代の松緑が、時蔵の青衣の女人を得て、初役で挑戦する楽しみな舞台です。

 本年は平城京が誕生して1300年となる節目の年。10月以降も、東京国立博物館 平成館で「東大寺大仏-天平の至宝-」(10月8日(金)~12月12日(日))が開催されるなど、様々なイベントが催されました。今回の『達陀』も、平城遷都1300年記念事業協会の後援を受けることとなりました。

 歌舞伎美人では、12月日生劇場「十二月大歌舞伎」の上演にむけ、【日生歌舞伎通信】と題し、様々なニュースをご紹介していく予定です。

※平城遷都1300年記念事業協会のホームページはこちらをご覧ください。

2010/10/15