幸四郎、梅玉、芝雀、染五郎が「四国こんぴら歌舞伎」への意気込みを語りました

幸四郎、梅玉、芝雀、染五郎が「四国こんぴら歌舞伎」への意気込みを語りました

 4月9日(土)~24日(日)までの16日間(32回公演)、第二十七回「四国こんぴら歌舞伎大芝居」が開催されます。公演に先立ち松本幸四郎、中村梅玉、中村芝雀、市川染五郎が公演への意気込みを語りました。

松本幸四郎
 「こんぴら歌舞伎」は3回目19年ぶりに出演させていただきます。金丸座が先駆けとなって、全国の古い江戸の頃の芝居小屋で歌舞伎が上演できるようになりました。今回で二十七回目を迎えますが、これも琴平町長さんをはじめ、商工会議所の皆さん、琴平町の皆さんのご努力と、大変感謝いたしております。皆様の熱意がなければ、金丸座のこんぴら歌舞伎大芝居はありません。それに応えられるよう、一日一日の舞台を疎かにせず、いい歌舞伎をご覧に入れたいと思っています。

 第三回の公演で、今は亡き十七代目中村勘三郎のおじと『沼津』を上演させていただきましたが、桟敷の客席を二人でセリフを言いながらまわっていると、まるで江戸時代にタイムスリップしてしまったようでした。お客様の顔は近いし、時には飴を勧められたり(笑)、昔の芝居小屋というのはこうだったのでしょうね。お客様と役者と交流があって、芝居に時候の挨拶やお客さんとの会話が入ったり、そういう気持ちを本の上ではなく、生身で教えてもらったのが金丸座でした。

 今回は『河内山』と『鈴ヶ森』に出演します。『河内山』のような芝居は、客席のお客様と一体となって、お客様の共感を得て初めて成立する芝居です。役者が啖呵を切って、お客様に、自分もそう思っているんだ、俺もそう言いたかったんだと、溜飲を下げていただく。まさに庶民の中から生まれた歌舞伎です。金丸座では、お客様の心が波のように押し寄せてくるのを感じた思い出があります。お客様の息づかいや体温を感じるほどの金丸座、ぜひ歌舞伎の魅力を楽しみに、琴平町へお出でいただきたいと思っています。


中村梅玉
 7年ぶり5回目の出演となりますが、まさに歌舞伎の原点と言うべき金丸座で芝居が出来るのを本当に楽しみにしております。本当に客席と舞台が一緒になれる芝居小屋です。そして、いつも我々を支えてくださる地元のボランティアの皆様、また、遠方からおいでくださる沢山のお客さまにはとても感謝しています。そして、琴平の桜を見るのも楽しみにしております。

 今回は第一部『鈴ヶ森』、第二部『河内山』とも幸四郎の兄さんとご一緒します。『鈴ヶ森』は皆さんもご存知だと思いますけが、まさに古風なお芝居ですから、とても金丸座に合うと思います。暗闇での立廻りがこの芝居のみどころの一つですが、金丸座という芝居小屋に合うような演出も、いろいろと考えているところです。『河内山』の松江出雲守は、幸四郎の兄さんの河内山で何度もやらせていただいていますが、また新たな緊張感を持って演じたいと思っております。


中村芝雀
 6年ぶり6回目の出演になります。『熊谷陣屋』の相模は女方の時代物の芸として、非常に重要なものです。父(中村雀右衛門)が演じたような風情を持って演じることが出来ればと思います。『藤娘』も女方の所作事として非常に重要なお役です。父は藤音頭で長らく勤めており、派手やかな、心躍るような、父の風情を継承できるような舞台を勤めたいと思います。また『鯉つかみ』では、大きな出し物の中で"姫"として、皆様に喜んでいただけるように努力したいと思っております。

 金丸座はお客様と俳優が本当に近く、ずいぶん昔に『白浪五人男』の赤星で出させていただきましたが、花道で傘を持って、お客様と目が合いお互い気まずいような思いをしたことがあります(笑)。それぐらい近い舞台ですので、事細かに、小さなところまでダイレクトにお客様には伝わるのではないのかなと思います。


市川染五郎
 『熊谷陣屋』は去年初めて勤めさせていただいた、家にとりまして大変大事な演目でございます。きちんと継承していかなければいけないという思い、責任を持ってこの舞台を勤めさせていただきたいと思っております。『鯉つかみ』は上演自体が久々ですし、趣向を重視したお芝居でもあるので、早替り、宙乗り、鯉と格闘をする立廻りと、金丸座の舞台機構、重要文化財をここまで使っていいのか、というぐらいの趣向を考えてあらたに復活したいと思っております。

 金丸座は本当に外と中の境が障子一枚です。お天気がいいときは、お天気の通りとても清々しい気持ちになれます。また、雨が降ったり、天候が悪い時には、雨の音を聞きながら芝居をする事になるのですが、自然の中で芝居を行っている事が感じられて、それは、とても風情のあることだと思います。4月という"桜の季節"を感じながらお芝居を観ることが出来るというのも金丸座ならではの事ではないでしょうか。

幸四郎、梅玉、芝雀、染五郎が「四国こんぴら歌舞伎」への意気込みを語りました

2011/02/14