勘九郎が挑む南座「吉例顔見世興行」での襲名披露

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 11月30日(金)~12月26日(水)、京都四條南座「當る巳歳 吉例顔見世興行」の演目と配役が決まりました。

 111回目を数える南座の顔見世、今年の昼の部は、片岡我當が当り役の高綱を勤める岡本綺堂の名作『佐々木高綱』で幕を開け、市川團十郎が平成12(2000)年11月歌舞伎座以来、また顔見世では初となる『石切梶原』、片岡仁左衛門が初役の工藤に挑む『寿曽我対面』、坂田藤十郎、中村扇雀の親子出演による『吉田屋』という狂言立てとなります。

 夜の部は、顔見世としては初の五、六段目の上演が話題の『仮名手本忠臣蔵』で仁左衛門が勘平を勤め、「口上」をはさんで勘九郎襲名披露狂言の『船弁慶』が続き、上方で30年ぶり、顔見世は初上演となる古風な芝居、『関取千両幟』で打ち出しとなります。

 この興行で、六代目中村勘九郎襲名披露狂言として上演されるのが、『寿曽我対面』、新歌舞伎十八番の内『船弁慶』。顔見世での襲名披露を控え、勘九郎がその思いを語りました。

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うれしい2度目の顔見世出演
 京の顔見世への出演が、父の中村勘三郎襲名(平成18年12月)以来、2回目とあって「出演が楽しみです。京の人々が大切に、また、街も賑やかに盛り上げてくださる顔見世での襲名がうれしい」という勘九郎。その最初の顔見世出演では、「東京と同じく『猿若江戸の初櫓』の猿若を踊らせていただき、阿国と一緒に江戸に行った芝居なので、京都の皆さんも喜んでくださったことと、『四の切』の静が大変勉強になったという思い出があります」。

初役の曽我五郎に挑む――『対面』
 「大河ドラマ出演で歌舞伎に出られなかったとき、『対面』を見て、ああ、歌舞伎って本当におもしろいなと思ったんです」と、演目に対する特別な思い抱く勘九郎は、「きら星のごとく素敵な先輩の五郎を見ていて、いつかやりたいと思っていた」と、念願の役に挑戦できる喜びが隠し切れない様子。

 「仁左衛門のおじさまが工藤を初役とは驚きました。十郎を大阪松竹座で勤めたとき(平成17年7月大阪松竹座)に役を習った時蔵さんが十郎で、お二方とご一緒できるのがうれしい」と、襲名披露狂言ならではの豪華な配役に、今からわくわくしているようでした。

10年ぶりに再び演じることの喜び――『船弁慶』

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 弁慶に團十郎、義経には藤十郎ほか、こちらも顔が揃った『船弁慶』。「20歳で『船弁慶』を勤め(平成14年1月浅草公会堂)、30歳で再び・・・。節目に巡り合う演目です」と、勘九郎が特別の思いを寄せる演目の一つです。

 「富十郎のおじさまの『船弁慶』が大好きで、夜中にヘッドホンをつけてテープが伸びるほど見ました。まず曲がいいんですが、静の壺折(つぼおり)を着ての踊りは難しい。でも、あの衣裳をお能の方に着せていただくと、踊りやすさが全然違うんです。今回もそのとおりに着ます」。また、「六代目菊五郎の壺折を父は着たことがあるのですが、残念ながら僕(の体の大きさ)では着られそうにありません」とのこと。

 「後ジテに替わる演目では、替わるための時間が一番短い役なんですが、父が初役で勤めたとき(昭和50年2月新橋演舞場)、心配した祖父が舞台稽古で化粧(かお)を手伝って、かえって大変だったという話がありまして(笑)。僕が初役のときは、父が"間に合うように"化粧をしてくれました」という、代々受け継がれた役ならではのエピソードも披露されました。

 京都四條南座「當る巳歳 吉例顔見世興行」は、冬の京の風物詩。チケットは、前半分が11月15日(木)、後半分は11月29日(木)から発売です。ぜひ、劇場まで足をお運びください。

2012/09/17