仁左衛門が語る松竹座「七月大歌舞伎」

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 7月3日(木)より始まる大阪松竹座「七月大歌舞伎」で、1年ぶりに大阪での公演に出演する片岡仁左衛門が、その思いを語りました。

 「久々の大阪での公演がうれしい。楽しみにしております」と元気な笑顔を見せた仁左衛門。昨年11月に手術を受け、療養を続けていましたが、6月の歌舞伎座で舞台復帰、7月の大阪では昼夜2演目に出演します。療養中、「公演のチラシに自分の名前がない、皆は活躍している...。乗り遅れているみたいで寂しかった」と本音も出ましたが、多いときで一日10km歩いて体力も回復、「心配いらないところまできました」と安心させてくれました。

お客様の拍手でようやくほっとする――『寺子屋』松王丸
仁左衛門が語る松竹座「七月大歌舞伎」 昼の部では、昭和41(1966)年3月大阪の朝日座で初めて勤めて以来、14回目となる『寺子屋』の松王丸を演じます。台本を読み返して「発見もあったし、自分の手に入ったものを捨てて、もう一度、初役のつもりでいろいろ考えることができた」と、休演中の時間がもたらしたものも大きいようでした。体力的には大変な役ですが、「やっぱりやりたいんですよね、芝居をね」。

 松王丸を教えてくれたのは父の十三世仁左衛門。「父は本当に細かいんです、一つひとつのせりふ、心理描写が。そして、父は見えないところまでとても大事にしていました」。たとえば、松王丸は駕籠の中から春藤玄蕃に声を掛けてから登場しますが、「(駕籠に乗っているていで舞台袖で)必ず座って声を掛けます。立ってしゃべるのとは全然声が違いますから。そういう役づくりの精神を教えてもらえる、いい師匠を私は持ちました」と、しみじみと語りました。

 「松王は後半の述懐が大変です。抑えていた感情を爆発させるところで、自分を斬ろうとしている相手に対して説明するからせりふの運びは速くし、そのあと、自分の心情を語るところはテンポを緩めていく。これが結構、しんどい」。そんな体力的にもきつい役を何度も演じるのは、「やはり、お客様がこのお芝居をわかってくださるから。幕が閉まるところでお客様の拍手に厚みがあるとほっとします」。

品を大切に演じる――『身替座禅』山蔭右京
 夜の部の『身替座禅』の山蔭右京も再演を重ねている役の一つです。「右京は"品"が大切。右京の身分を考えないといけません。一般庶民ではなく、家に持仏堂がある、使用人のいる人が浮気するのです。それと男の可愛さも大事」。だからこそ、浮気をする男の話なのに女性にも人気があるのではと言います。

 言葉の通じない外国でも面白いといわれる演目ですが、「お客様を笑わせようと思ってやっているのではありません。笑ってくださればありがたいけれど、役を踏み外さないようにしないと。演目にかかわらず、自分の気持ちが盛り上がってくるところで、お客様の気持ちも盛り上がってくださればありがたいです」。

 唯一、毎年恒例となっている大阪の公演だけに、仁左衛門の思いは強く、「関西で歌舞伎が開けられなかった頃の必死さ、この興行を成功させたいという必死な気持ちを忘れずに、大切にしたい」と意欲を持って公演に臨みます。演目についても「歌舞伎がわからないという人にも楽しんでいただけるように」と、当初からの姿勢は変わりません。

 大阪松竹座「七月大歌舞伎」のチケットは、6月5日(木)より、チケットWeb松竹チケットホン松竹にて販売されます。

2014/05/26