「明治座 五月花形歌舞伎」舞台稽古を公開

 5月2日(土)の初日を前に、明治座で 「明治座 五月花形歌舞伎」の『男の花道』『鯉つかみ』の舞台稽古が公開されました。

芝居の中に引き込まれる『男の花道』
 客留の大入りとなった大坂、中の芝居の芝居前は、人気役者、三代目歌右衛門の噂でもちきりです。そこへ、芝居小屋から引きずり出されてきたのが土生玄碩(中車)、芝居客の浮かれ振りとは正反対に、冷静な口調で歌右衛門は眼が悪いと指摘します。当の歌右衛門(猿之助)が登場するのは次の「金谷宿」の場。匂い立つような湯上り姿で現れます。

 按摩の話や、富士山の景色を引き合いに出したりしながら、物語は徐々に役者として眼が見えなくなることがどれだけ辛いことなのか、歌右衛門の絶望へと収束していきます。いよいよ追い詰められた歌右衛門の前に現れるのが玄碩。歌右衛門の絶望が深いほどに、玄碩の存在感が増し、手術成功の喜びが大きくなります。そして、日本一の富士の山を臨みながら、ともに日本一の医者に、役者になるまでは逢わないことを誓います。4年後、二人は約束の言葉どおり、日本一となって再会を果たすのですが、その出会いは…。

 歌右衛門が盲目になったときのためにと『袖萩祭文』の三味線と唄を聴かせたり、劇中劇で『櫓のお七』の人形振りを見せたり、座敷で『老松』を舞ったりと、お楽しみが随所に盛り込まれている『男の花道』。劇場中を巻き込んでのクライマックスはもちろん、客席で見ているつもりが、いつの間にか芝居の中にすっかり取り込まれてしまう一本です。

見せ場の連続で飽きさせない『鯉つかみ』
 大百足(おおむかで)の吐く毒で田畑が荒れ放題、人身御供として差し出された娘の前に現れたのが、三上山の大百足(猿弥)です。瀬織津媛(秀太郎)が宝剣、龍神丸を取り出して退治しようとするところに駆けつけたのは俵藤太秀郷(愛之助)。大百足のたくさんの足が息の合った動きで美しい形を見せ、俵藤太との大立廻りは見ごたえのあるひと場になっています。ついに大百足は龍神丸に刺され、辺り一面が血の海に…。

 大百足の血は琵琶湖の底まで赤く染め、精進潔斎をして龍となろうとしていた金鯉(愛之助)の身も汚れてしまいます。怒ったのは金鯉の父、鯉王(中車)。鮒五郎(右近)の注進により、この血潮が俵藤太によるものと知った鯉王は、俵家を末代までも呪うと誓うのでした。この新しくつくられた序幕によって、鯉が俵藤太から続く釣家を怨むに至った理由がよりわかりやすくなりました。

 愛之助はさらに二幕目でも4役を勤め、花道のスッポンから飛び出して宙乗りを見せたかと思うと、恋煩いの小桜姫(壱太郎)と蛍火の中で連れ舞を見せ、矢に射抜かれる鯉の精とその矢を放った志賀之助を早替りで勤めるなど大奮闘。本水での大鯉退治は、上がる水しぶきも涼やかで、初夏の芝居にぴったりの打ち出しとなりました。

 昼の部は、右近が曽我五郎を勤める歌舞伎十八番の内『矢の根』で、“これぞ歌舞伎”の一幕から始まり、夜の部には猿之助と中車がじっくりと二人芝居を見せる『あんまと泥棒』も上演されます。

 バラエティーに富んだ演目が並んだ 「明治座 五月花形歌舞伎」は、明日5月2日(土)から26日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹明治座ほかにて販売中です。

2015/05/01