「大阪平成中村座」初日開幕

 10月25日(日)、大阪城西の丸庭園内特設劇場にて「大阪平成中村座」が初日を迎えました。

 平成14(2002)年11月の扇町公園、平成22(2010)年10月・11月の大阪城西の丸庭園に続く、平成中村座の3度目となる大阪公演が開幕しました。早朝から大阪マラソンのランナーたちでごったがえしていた大阪城公園が、江戸の芝居町へと一気にタイムスリップ。ご来場のお客様は、春の浅草で好評だった「隠れ勘三郎」を探しながら、さっそく5年ぶりの大阪の平成中村座を楽しんでいらっしゃいました。

 十八世にちなんで“18カ所の勘三郎の目”が場内に隠されていますが、前日の取材で、「勘九郎君が最後の1個をすごいところに隠しています。見つけた方には勘九郎くんから賞金が出ます」(扇雀)、「賞金はいくら? せめて、最初の方だけにでも…」(橋之助)、「出しませんたらっ!」(勘九郎)といったやりとりが出たのも、サービス精神たっぷりの平成中村座ならではです。

 昼の部は『女暫』から。大きな素襖の衣裳の巴御前が花道に現れると、その存在感の大きさが劇場の隅々にまで伝わっていきます。女方の荒事の艶やかさ、幕外で舞台番とのやりとりに見せる恥じらい、巴御前の色気に客席も酔います。

 続く『三升猿曲舞(しかくばしらさるのくせまい)』は、ご当地ゆかりの木下藤吉郎(豊臣秀吉)が此下兵吉の名で、曲舞を見せるという趣向。猿と呼ばれた藤吉郎にちなみ、猿回しの踊りも入ります。最後は舞台奥が開き、大阪城の天守閣を背景に華やかに踊ってきまると、場内が一段と大きな拍手で沸き上がりました。

 『狐狸狐狸ばなし』では十八世勘三郎が何度も手がけた伊之助を、扇雀が勤めます。強烈な個性の登場人物たちの駆け引きに、物語の展開がわかっていてもついつい笑ってしまう、抱腹絶倒の芝居です。

 夜の部は『俊寛』から始まります。十八世勘三郎が自身の襲名披露狂言、十七世勘三郎の追善演目として上演し、鬼界ヶ島といわれている硫黄島も含めて幾度となく勤めた俊寛僧都を、橋之助が勤めます。

 最後は『盲目物語』。信長の妹お市をめぐって柴田勝家と木下藤吉郎、それぞれの思いが時代の流れに翻弄されるなか、秘かにお市に思いを寄せていた盲目の弥市のとる行動が胸を打ちます。初演時、弥市と藤吉郎後に秀吉という、身分も性格もまったく異なる二役を早替りで勤めたのが十七世勘三郎。十八世勘三郎に受け継がれたこの二役に、勘九郎が初めて挑みます。

 本物の城を背景に取り入れた演出は、平成中村座でしか見ることのできない一場です。幕が閉まっても拍手は鳴りやまず、カーテンコールで出演者がお客様に応えました。

 「大阪平成中村座」は、11月25日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹にて販売中です。

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2015/10/25