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超歌舞伎『花街詞合鏡』、進化した演出

超歌舞伎『花街詞合鏡』、進化した演出

上手(写真右)に獅童の紋三、下手(写真左)に國矢の新右衛門、そして二人の”分身”が5組も出現! 分身像もより精緻になり、立廻りの迫力も大きくパワーアップ

 4月29日(土・祝)、幕張メッセのイベントホールにて上演された超歌舞伎『花街詞合鏡(くるわことばあわせかがみ)』で、超特別協賛NTTの新しい技術による歌舞伎演出の裏側が明かされました。

イマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!」が進化

 昨年の『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』では、青龍の分身たちによって、脇ステージにある黒バックのスペースに閉じ込められた獅童演じる佐藤忠信が、霊力によって自身の分身を本舞台上に出現させ、ディラッドボード(背面投影用のボード)に投影された忠信の分身と、生身の青龍の分身が立廻り見せるものでしたが、今年は、獅童が演じる八重垣紋三の分身と、國矢演じる蔭山新右衛門の分身、分身どうしの立廻りが見られました。

 

 「グリーンバックやスタジオを使わずに映像を切り抜き、別の場所にリアルタイムに投影する技術の向上を目指しています」とNTTの技術担当者。演者を囲むことなく、特別な照明を当てることもなく、きれいな分身が登場しました。

 

 上手(かみて)の獅童をとらえるカメラとは別に、下手(しもて)の國矢は望遠レンズで撮影、コントロールブースで切り抜いた映像に、ドワンゴの映像スタッフがエフェクトを施すという連係プレーが行われました。映像を切り抜いて映し出すまでのタイムラグは30ミリ秒(1ミリ秒=1,000分の1秒)以下。今後は「毛振りの毛1本、鬘(かつら)の髪1本までリアルタイムに切り抜く技術も開発中」と言います。

 

超歌舞伎『花街詞合鏡』、進化した演出

舞台を盛り上げるエフェクトも進化。演者との息もぴったりでした

 環境を選ばず、より精緻な再現映像を、限りなく同時に伝送する技術。それが感動を呼ぶ効果をもたらすのは、「エフェクトをかける映像スタッフさんの技術、ノウハウ、スキルなのですが、これがまた素晴らしい」と、NTTの技術者も驚いていました。

 

 最先端の技術と積み重ねてきた舞台の技術が生み出す演出は、無限の可能性を秘めているといってもいいでしょう。

 

超歌舞伎『花街詞合鏡』、進化した演出

 今回はアリーナ席を囲むように、36メートルの長さに並べられたスピーカー。縦方向には積み上げる必要は、あまりないのだとか

音が客席に飛び出す技術も

 今回、アリーナ席の近くには240台、36メートルにわたり、スピーカーが並べられていました。龍神塚から砕け散った石ころ、花魁道中の金棒引き、雨や雷、空中を暴れ回る青龍…、思わず振り向いてしまいそうになるほど、音がすぐそこから聞こえてくる効果は、「波面合成技術」という音響再生技術によるものです。あたかも立体映像が浮かび上がるように、立体的な音が立ち上がりました。

 

 「昨年のバーチャルスピーカーとはまったく異なる技術です。昨年は、舞台上の初音ミクさんが話しているような効果は得られましたが、客席に音を飛び出させることは難しかった」。しかし今年は、音を一点に集めてパワーを集中させることで、パワーの焦点に音源があるかのような処理を行い、客席の任意の場所に音源があるかのように演出できたというわけです。スピーカーの設置条件が劇場空間の制限にかかっているため、条件に合わせて音響体験ができる範囲や効果を上げていくことになるそうです。

 

驚きは会場の外でも

 加えて今回は、ドワンゴによる生配信の映像にも進化がありました。初音ミクのディティールがはっきりわかるほど美しく、緻密になったためAR(拡張現実)による演出効果も格段に向上し、配信映像ではミクが実際に舞台に立っているように見えたほか、衣裳の質感もリアリティーあるものとなり、賛辞のコメントが多数寄せられました。

 

 このほかに配信映像のAR演出としては、昨年同様に舞台の周囲には芝居小屋を思わせる破風の装飾が施されほか、龍神塚から復活した龍が会場内を飛び回る演出や、燃え上がる炎、舞い散る桜の花びらもARで表現され、ニコニコユーザーも会場とはまた違った臨場感をもって、配信映像ならではの超歌舞伎の舞台を楽しむ環境がさらに整いました。

 

 客席をにらむ隈取の迫力! 体験者のヘアスタイルやメガネなど、個性をとり込んだ隈取が投影されました

超変身歌舞伎で超参加!

 ラスベガス公演でデビューしたインタラクティブ体験展示も、大きく進化していました。「超変身歌舞伎」では、自動認識した顔に自分が選んだ隈取が施され、AR(拡張現実)重畳。歌舞伎独特の間や表情を加え、プロジェクションマッピング投影されます。ラスベガスの観光客にも人気の体験展示でしたが、今年の超歌舞伎の会場では、舞台上方にしつらえられた高さ10メートルのデカオー丸にプロジェクションマッピング投影されました。

 

 迫力の隈取顔が客席をにらみますが、表情豊かで、しかもどことなく撮影された本人の面影もあって、温かみが感じられます。「技術云々より今回は、どうしたら喜んでいただけるかに注力しました。超歌舞伎らしいインパクトのある顔をつくるため、さまざまな検証を行いました」。隈取体験をした人には、隈取を施した面もプレゼントされました。 

 

超歌舞伎『花街詞合鏡』、進化した演出

 「変幻灯」を当てることで、隈取面の表情が変わって見えるという不思議も体験していただきました

超歌舞伎『花街詞合鏡』、進化した演出

 ブースの入口には「デカオー丸Jr」も登場、体験者の隈取顔がこんなところにも映し出されました

 

 

 伝統文化と先端技術、そしてユーザーが一体となった「超歌舞伎」。技術の進化が速度を増し、汲めども尽きぬ歌舞伎の可能性が、いっそう新たな魅力を生み出していきます。

 

超歌舞伎 supported by NTT『花街詞合鏡』特設サイト

※「当日生放送」のタブから、視聴ページに移行できます(プレミアム会員は5月29日まで視聴可能)。

2017/05/11