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「名古屋平成中村座」に8年ぶりの一番太鼓

「名古屋平成中村座」に8年ぶりの一番太鼓

 「名古屋平成中村座」一番太鼓の儀(左より、田中傳次郎、中村勘九郎、中村七之助)

 

 

 6月1日(木)、名古屋城内二之丸広場 特設劇場「名古屋平成中村座」が初日を迎えました。

 平成21(2009)年に平成中村座公演が行われてから8年、再び名古屋城内に開幕を告げる一番太鼓が鳴り響きました。開幕を待ち焦がれていた大勢のお客様が見守る中、櫓の上がった劇場正面に勘九郎、七之助も登場し、厳かな一番太鼓の儀が執り行われ、緊張と期待を高めていきます。

 

「名古屋平成中村座」に8年ぶりの一番太鼓

 儀式の終了とともに大きな拍手が沸き、挨拶に立った勘九郎は、「昔、中村座が江戸の中橋(現在の京橋あたり)にあった頃、一番太鼓の音が登城の太鼓と間違えられるから、芝居小屋の場所を移しなさいといわれたというような記録が残っています。それがまさかこの名古屋城内できるなんて…」と感慨にふけり、「稽古を重ね、とてもすてきな舞台になりましたので、たくさんの方に観ていただきたいです」と、感謝と喜びの気持ちを笑顔で表しました。

 

「名古屋平成中村座」に8年ぶりの一番太鼓

 一昨年、浅草の平成中村座で十八世勘三郎をしのび、お客様に楽しんでいただこうと劇場のあちこちに“隠れ勘三郎”が仕込まれましたが、今回の名古屋にもしっかり18の隠れ勘三郎が。七之助は「私たちも進化しておりますが、平成中村座自体も8年前とはまた違っております。ぜひ、皆様に“隠れ勘三郎”探していただきたい。一日を中村座で楽しんでもらい、幸せな気持ちになってお帰りいただきたいと思います」と呼びかけました。

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 幕開きは『壽曽我対面』。歌舞伎のさまざまな役柄が登場する演目で、出演者ほぼ全員が顔をそろえ、ご当地の皆様にお目見えしました。五郎と十郎の曽我兄弟は、萬太郎と梅枝の兄弟が初役で勤めます。彌十郎が工藤を、新悟が化粧坂少将を初演したのは5年前の平成中村座。初役に挑んだのが平成中村座だったという経験をもつ出演者は多く、今回もそれぞれの演目で初挑戦があります。

 

 続いては、玩辞楼十二曲の内『封印切』、忠兵衛の扇雀が家の芸を見せます。梅川は七之助、憂いを帯びた登場に客席からため息が漏れました。忠兵衛と八右衛門(勘九郎)の小気味のよいやりとりには、場内が何度も沸きました。しかし、だんだんと忠兵衛が追いつめられていくくだりでは、客席の空気までもが凍りつくようで、劇場がひとつになって緊迫感あふれる一場がつくり上げられました。

 

 昼の部の終わりは、勘九郎の鳶頭で『お祭り』です。名古屋のお客様に「待ってました!」と言われたときの鳶頭のうれしそうな顔と、お客様の喝采が、8年ぶりの再会の喜びを物語っていました。最後は名古屋城もとり込んでの演出で、賑やかに昼の部を打ち出しましたが、大きな拍手、手拍子が太鼓の音をかき消すかのようにいつまでも続いていました。

 夜の部は「四の切」として親しまれている『義経千本桜』の「川連法眼館の場」から始まります。扇雀の佐藤忠信と忠信実は源九郎狐、梅枝の静御前に、勘九郎が義経という新鮮な顔ぶれ。鼓を手に花道を幸せそうに駆けていく源九郎狐を、義経、静とともにお客様も温かい拍手で見送りました。

 

 『弁天娘女男白浪』は、七之助の弁天小僧に片岡亀蔵の南郷力丸。浜松屋では好きな役者と言われた亀蔵の、「あのような役者は大嫌い」にどっと沸き、金勘定しながら花道を引込む二人にくすくす笑いが起きます。そして、花道が間近に感じられ、舞台との距離も近い平成中村座ならではの勢揃い、ツラネの迫力がお客様の心をゆさぶり、客席と舞台の一体感が堪能できるひと幕となりました。 

 

 切狂言は勘九郎と七之助が、振付の西川鯉三郎の地元名古屋でぜひ上演をと願っていた『仇ゆめ』。舞の師匠に化けた狸が島原の傾城に恋をする物語で、艶やかな舞から滑稽な振りの踊りまで、多彩な振付が目にも楽しい舞踊劇です。千両箱を手に入れた狸が、平成中村座らしい演出で場内を大きく沸かせました。最後は幻想的な舞台となり、ひととき現実を離れて夢の世界へ…。平成中村座をあとにするお客様の弾んだ声が、熱い初日を締めくくりました。

 名古屋城内二之丸広場 特設劇場「名古屋平成中村座」公演は、6月26日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトほかで販売中。なお、会場での当日券販売の予定はなく、立ち見券(4,000円 税込)は名古屋平成中村座事務局(052-961-6777)のみでのお取扱いとなります。

 

「名古屋平成中村座」に8年ぶりの一番太鼓

2017/06/02