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歌舞伎座「七月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「七月大歌舞伎」初日開幕

 

 7月3日(月)、歌舞伎座「七月大歌舞伎」の初日の幕が開きました。

 7月の歌舞伎座は歌舞伎十八番の内『矢の根』から始まります。一昨年の5月の明治座で初演して以来、右團次の名前では初めての曽我五郎。背丈より大きな矢を研ぐ五郎は、車鬢(くるまびん)に筋隈、これぞ荒事といういでたちです。夢で兄の十郎(笑也)のお告げを聞き、飛び起きた五郎が仁王襷(たすき)をかけるところでは、五郎のはやる気持ちが三味線の演奏に乗り、結び終わると同時に大きな拍手。動きの一つひとつが豪快にきまり、荒事の面白さが堪能できる一幕です。

 

 『加賀鳶』は、じめじめした梅雨を吹き払うような、威勢のよい鳶たちの登場から始まります。左團次の雷五郎次まで十二人の鳶のせりふが、気持ちよく耳に響きます。梅吉は初役の海老蔵。中車の松蔵と喧嘩にはやる若い衆を一喝、これぞ江戸の粋という一場です。そこから一転、今度は按摩の道玄として登場する海老蔵。道玄は非道ながら、追いつめられたときの慌てぶりに可笑しみがあります。このふてぶてしい小悪党と一緒に悪事を働くお兼を初役で勤めているのが、二代目を襲名した齊入です。

 

 昼の部の切は『連獅子』。海老蔵と巳之助の前シテは、狂言師として格調のある踊りを見せます。谷底から這い上がってきた仔獅子をうれしそうに迎え入れる親獅子、手獅子の鈴の音を涼やかに響かせて二人が花道を引込みました。間狂言(あいきょうげん)をはさみ、後シテは獅子の精として百獣の長の風格を漂わせて登場します。何物をも寄せ付けない孤高の獅子の精、その気迫あふれる毛振りに拍手が鳴りやみませんでした。

 夜の部は通し狂言『駄右衛門花御所異聞』。駄右衛門といえば『白浪五人男』の日本駄右衛門が思い浮かびますが、本作はそれより前の宝暦11(1761)年に初演された『秋葉権現廻船語(あきばごんげんかいせんばなし)』をもとに、現代の手法もとり入れて上演されます。

 

 物語は日本駄右衛門が御家乗っ取りを狙う月本家の騒動のもととなった、始之助(巳之助)と傾城花月(新悟)の駆け落ちから始まります。心中を止め立てしたのは家老の玉島逸当(中車)。一行が城へ戻ったあと、逸当の弟、幸兵衛(海老蔵)が現れますが、幸兵衛は兄に勘当されており、月本家の重宝、古今集を盗んだ駄右衛門(海老蔵)と斬り合って傷を負わせます。海老蔵の早替りで見せる立廻りに、客席から驚きの声が上がりました。

 

 月本家では、将軍家から紛失した古今集詮議の命を受け、思い悩んでいるところ、駄右衛門扮する偽上使の命により、当主の円秋(右團次)が切腹の運びとなります。『忠臣蔵』「四段目」を思わせる緊張の中、駆けつけた逸当が自らの命をかけて御家の危機を救い、妻の松ヶ枝(笑三郎)に秋葉権現のお守りを託して息絶えます。正体がばれた駄右衛門は堂々と名のりを上げ、月本家のもう一つの家宝、三尺棒を手に天下を盗むと豪語します。

 

 始之助と花月の道行で幕を開ける二幕目は、茶屋の女主人お才(児太郎)を軸に、『伊勢音頭』や『すし屋』、『籠釣瓶』などを思わせる場面が次々と展開され、幸兵衛をとり巻く物語となります。忠誠心や夫婦愛が奇跡を呼び、御家再興を願う円秋の前に現れたのが秋葉大権現(海老蔵)。花道を駆け出てきた使わしめの白狐(堀越勸玄)とともに、駄右衛門退治へと宙を駆けていきました。4歳での宙乗りは記録上最年少です。

 

 大詰は将軍義政(齊入)が腰元たちと福引遊びをするところへ、高僧に化けた駄右衛門が現れ、「我が望みは日本の王」と言い放ちます。そこからは、大仕掛けを使っての大立廻り。三尺棒を使って亡者を配下にしながら戦う駄右衛門に対するのは、海老蔵の早替りによる幸兵衛と秋葉大権現、豪快な立廻りが続きます。お馴染みの歌舞伎の世界、趣向をたっぷり詰め込み、最後は古風に三段に乗っての幕切れとなる駄右衛門の物語。歌舞伎らしさ満載の夜の部でした。

 

 歌舞伎座「七月大歌舞伎」は7月27日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。 

2017/07/04