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扇雀、獅童登場、NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』舞台初日挨拶

扇雀、獅童登場、NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』舞台初日挨拶

 東劇でのNEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』初日舞台挨拶、左より、中村獅童、串田和美(監督)

 9月30日(土)、全国57館でNEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』が公開され、東京では初日舞台挨拶に、中村扇雀、中村獅童、舞台の演出・美術と映像の監督を務めた串田和美が登場しました。

ひと足先に映像で歌舞伎に帰ってきた獅童が東劇に登場

 東劇では初回上映前に獅童と串田が登場。「とっても感動しました。演劇は“生”だといわれるけど、シネマ歌舞伎もいいなと思いました」と素直な感想を述べた獅童に対し、「舞台をつくっている人間は、演劇は後に残らないものという寂しさと同時に誇りも持っているので、(映像として)残すことに自分への裏切りのような気持ちも、実はあります。でもだからこそ、ちゃんとつくろうという強い気持ちがあります」と続けた串田。

 

 「串田監督の色彩美、映像の美しさを十分に楽しんでいただけます。映像は(対象に)寄ることができるので、細かい仕草や目の表情もおわかりいただけるのではないでしょうか」と、獅童がアピールポイントを挙げると、串田は「舞台そのもののつくり方も映画から学んでいる」と語り、一例として伊右衛門が伊藤家から帰ってくるシーンを解説しました。

 

扇雀、獅童登場、NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』舞台初日挨拶

「新しい伊右衛門をつくろう」

 伊右衛門は古典歌舞伎では色悪という役柄。「それを一度ぶち壊しました。串田監督から、伊右衛門がかっこ悪くたっていいじゃないか、これが伊右衛門か?と言われてもいいじゃないかとのお言葉をいただき、稽古場ではいろいろな演じ方をやらせていただきました」。獅童は勉強になって楽しかったと語りました。

 

 舞台の演出として串田は、「実は、伊右衛門がぼうっと見ている一つの夢、あるいは回想みたいなものかもしれない、というコンセプトのつくりにしていました。それが映像ではさらにはっきり表現できました」。編集作業でアップも多くなり、「獅童さん、いいな」と思ったと言われ、獅童は素直にうれしいですねと喜んでいました。

 

 「自分なりに想像して串田監督の世界観に一歩でも近づけるよう、とにかく稽古場に行ったらやる。これは(十八世)勘三郎お兄さんの、なにか言われたら動物的にやってよ、考えるのは家でいいからって言葉が、すごく自分の中に残っているからです。僕にとって、芝居というものはコクーン歌舞伎で培ったことが大きいんじゃないかと思います」。獅童が言葉で表した精神は、NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』の映像にしっかりと刻み込まれています。

『四谷怪談』思い出のBunkamuraには扇雀が登場

扇雀、獅童登場、NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』舞台初日挨拶

 Bunkamura ル・シネマでのNEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』初日舞台挨拶、左より、中村扇雀、串田和美(監督)

 同日夜に行われたBunkamura ル・シネマの舞台挨拶に登場したのは扇雀。演じたのは、お岩と佐藤与茂七です。「原作の『四谷怪談』はいろんな話が入った群像劇。なかでも与茂七は大きな役で、扇雀さんに、新しいやり方で演じていただきたいとお願いしました。普段あまり上演されない三角屋敷の場で、すごく男らしい与茂七、新たな与茂七像をつくってくださったと感謝しています」と、串田は演出意図を語りました。

 

 「四谷様は本当に縁が深いお芝居で」、という扇雀は、もう一役のお岩について、「読み合わせのときに一番有名な髪梳きのところで、じっとしていてくれないか、せりふを後ろに映すからと監督に言われ、ええーっと驚きました。無言でじっとしていながら、お客様にお岩さんが今どういう状況かわかってもらえる演技法はと、非常に悩みました」。串田も、「僕が与茂七に焦点を当てようと思ってもやはり、お岩はどうするんだと」、見えないプレッシャーがあったと続けました。

 

 「でも、南北の時代だって、初演は誰かの真似をしたわけではない。歌舞伎をゼロからつくり上げる精神を今によみがえらせようというのが、勘三郎の兄貴でした。歌舞伎を始めた当時の歌舞伎俳優が持っていた思いと同じところに行きつけたことは大きい」と、勘三郎、串田、そしてコクーン歌舞伎との出会いに恵まれたと、扇雀は感謝していました。

 

扇雀、獅童登場、NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』舞台初日挨拶

こんな映画があってもいい

 舞台では気にならない、早替りのための貼り眉も、ぐっとアップになるシネマ歌舞伎でははっきりとわかります。「僕はわざと映しています。それがいい。怪我だって、リアルなメイクより、メイクだと思って観ると想像力もふくらむ。道具を動かしている人もわざと見えるようにして、脇ではこんなことやってますよと、わかるようにした。こういう映画があっていいんじゃないかと、一つの提示のつもりでやっています」。

 

 そんな串田の編集意図がある一方、扇雀は、隠しカメラを含め何台ものカメラで撮影しているので、「俳優側に(撮られている)意識がなく、非常にナチュラル。普通、舞台中継だとわかると、つい熱が入ってしまうものなんです」と、スクリーンの中の演技がリアルであることを明かしました。そして、「お客様が伊右衛門と同じ感覚で、彼の脳内の映像を見るような感覚になる。これはNEWシネマ歌舞伎ならではです」と、あらためてその魅力を挙げました。

扇雀、獅童登場、NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』舞台初日挨拶

 青山学院大学で特別講義の教壇に立った串田和美

 公開初日を控えた9月28日(木)には、青山学院大学の青山キャンパスで、串田がNEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』の特別講義を行いました。

 

 過去に上演された『四谷怪談』北番の舞台映像と、NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』の映像を見比べながら、舞台、映像の演出や編集について解説したほか、原作、歌舞伎、演劇、映画など、内容はさまざまな分野にわたり、話がどんどん広がっていきました。また、学生からも『四谷怪談』だけでなく、歌舞伎や演劇についても活発に質問が寄せられ、気づいたときにはとうに終了時間を過ぎていたほどの盛況でした。

 NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』の上映館はこちら。解説付き上映の予定もこちらの「関連ニュース」欄でご覧になれます。

 

 

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2017/10/03