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芝翫親子共演、世界初の虚実共演伝送舞踊『京結夢現連獅子』

芝翫親子共演、世界初の虚実共演伝送舞踊『京結夢現連獅子』

 虚実共演伝送舞踊『京結夢現連獅子』 左より、中村福之助、中村歌之助、中村芝翫、中村橋之助。芝翫は実際にこの先斗町歌舞練場の舞台で踊り、宮川町歌舞練場の三人は映像で登場

 11月12日(日)、京都 先斗町歌舞練場と宮川町歌舞練場を結んで、虚実共演伝送舞踊『京結夢現連獅子』が、「當る戌歳 吉例顔見世興行」の特別企画として開催され、中村芝翫、中村橋之助、中村福之助、中村歌之助が、離れた2カ所で踊って共演を果たしました。 

あたかも四人が一つの舞台で共演しているよう

 先斗町歌舞練場の舞台上手に手獅子を携えた芝翫が登場。一方、約1キロメートル離れた宮川町歌舞練場の舞台では橋之助、福之助、歌之助が踊り、その映像をリアルタイムで切り出して先斗町の舞台の紗幕に投影、客席からは、四人が先斗町の舞台で踊っているようにしか見えません。足拍子もそろい、所作もそろって見事に一つの作品、虚実共演伝送舞踊『京結夢現連獅子』が始まりました。

 

 さらに、文殊菩薩のいる浄土へと架けられた石橋に近づいたり、牡丹の花が咲き乱れたりと、背景の映像も四人と共演を果たしました。宮川町で踊る三人の仔獅子が谷底へ落とされると、ふっと舞台から姿が消えるという、虚像ならではの演出が新鮮です。また、客席の左右両側には詞章の字幕表示もあり、初めて歌舞伎をご覧になる方にも作品世界がよくわかる工夫がされていました。

 

芝翫親子共演、世界初の虚実共演伝送舞踊『京結夢現連獅子』

 虚実共演伝送舞踊『京結夢現連獅子』 左より、中村福之助、中村歌之助、中村橋之助、中村芝翫。上手(かみて)と下手(しもて)にスクリーンを設置、舞台上のプロジェクションマッピングの映像演出と融合させることで、広視野角の舞台となり、映像に包まれるような没入感のある鑑賞に

 

新しい演出の可能性が広がる

 昨年の4月、「超歌舞伎」では俳優の演じる忠信を、同じ舞台に複数映し出し、“分身の術”の演出を見せましたが、今回は、離れた2拠点でリアルとバーチャルが共演を果たすという、世界初の舞台が成功を収めました。これを実現させたのが、NTTの最先端テクノロジー(ICT)の結集である「Kirari!」。情報収集・加工、リアルタイム同期伝送、演出・再現を実現する技術で、あらゆる場所で臨場感を味わえることを目指し、技術を開発、進化させています。

 

芝翫親子共演、世界初の虚実共演伝送舞踊『京結夢現連獅子』

 虚実共演伝送舞踊『京結夢現連獅子』 左より、中村歌之助、中村福之助、中村芝翫、中村橋之助。踊る芝翫と映像の三人が交差したり、花弁の背景も含め、奥行き感のある舞台が出現

 獅子の精の激しい動きにも乱れることなく、クリアな映像を切り出し、しかも、実際に踊っている親獅子の精と共演できるほど、タイムラグを限りなく小さくした結果、息の合った四人の舞踊が実現しました。虚像としての共演は、映像ならではの演出の可能性も秘め、今後への大きな期待にもつながりました。

虚実共演伝送トークで歌舞伎をアピール

 世界初の舞台の成功を収めた四人は、そのまま先斗町歌舞練場、宮川町歌舞練場の2カ所をつないだトークイベントに登場しました。今度は“虚実共演伝送トーク”の始まりです。今回の特別企画では、抽選で約250名の中高生、大学生を中心に、若い層のお客様に多くご来場いただきました。

 

 芝翫は幼いお子さんもいらっしゃる客席を見渡し、「お若い方が多うございますね。日本が誇る文化を、少しでもご理解いただき、味わっていただき、今後ご贔屓していただくことを切にお願いいたします」と呼びかけました。「本当のことを申しますと、これほどうまくいくとは思っていませんでした。(牡丹や獅子などの)周りの映像もきれいで、素敵でした。こういった世界初のことを、もっと歌舞伎に取り入れていけたら面白いと思います」と、終えたばかりの舞台にすっかり感心している様子。

 

 橋之助は「初めての試みに参加できてすごくうれしい。(来月の)顔見世興行では、昼の部『寿曽我対面』で曽我五郎のお役を頂戴し、憧れのお役だったので夢のようです」と喜び、福之助は「話をうかがったとき、そんなことできるのかなと思ったのですが、終わってみると、すごかったなと。(親子同時襲名をすることで)家でもお芝居のことを話す機会が増えたので、家族の絆が深まりました」と、驚きを交え、歌之助からは「貴重な体験に参加できてありがたい。(親子同時襲名も、今日の舞台も)親子で、協力することが多かったので、一人で頑張るというより心強かったです」と、三人一様に、今回の特別企画に感心し、顔見世興行での親子同時襲名への思いを語りました。

 

芝翫親子共演、世界初の虚実共演伝送舞踊『京結夢現連獅子』

 左より、門川大作京都市長、中村歌之助、中村福之助、中村橋之助、中村芝翫。中央の三人が宮川町歌舞練場、市長と芝翫は先斗町歌舞練場にて

京都から最先端技術を駆使した文化を発信

 この舞台と「はじめまして子ども歌舞伎」を、若者のための「京都 和の文化体験の日」として開催した京都市から、門川大作京都市長も先斗町の会場でトークに参加。「握手したいなあ」と宮川町の歌之助(先斗町では擬似ホログラムで登場)とがっちり握手し、両会場から大きな拍手を受けていました。そして、歌舞伎という伝統芸能が若い世代に受け継がれていることに感心し、「伝統文化と最先端技術が融合したこのような試みを、世界で初めて京都市から発信していただけたのはうれしい限りです」と、感慨を新たに述べました。

 

 先斗町歌舞練場では、自分の隈取顔を巨大な顔のオブジェにプロジェクションマッピングできる「変身歌舞伎」も大人気で、小さなお子さんも大人もインタラクティブ体験を楽しんでいらっしゃいました。最後に芝翫が、「今日は大変にいい経験をさせていただきました。歌舞伎はどんどん若手が増えております、一所懸命勤めておりますので、どうぞ劇場へ足をお運びください。やはりライブが一番」と、襲名披露を行う吉例顔見世興行へのご来場を呼びかけ、トークイベントがお開きとなりました。

 ロームシアター京都 メインホール「京の年中行事 當る戌歳 吉例顔見世興行東西合同大歌舞伎」は、12月1日(金)から18日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2017/11/13