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菊之助が語る「松竹大歌舞伎」東コース

菊之助が語る「松竹大歌舞伎」東コース

 

 

 6月30日(土)から始まる、(公社)全国公立文化施設協会主催「松竹大歌舞伎」東コースについて、出演の尾上菊之助が語りました。

 昨年、50周年を迎えた公文協の全国公演。次の50年に向けて新たなスタートを切る今年、東コースで25カ所全42公演を行う菊之助は、「非常に光栄に思っております」と、気を引き締めました。今年の東コースは、梅枝が初役で挑む女方舞踊『近江のお兼』と、菊之助が3年ぶり2回目の五郎蔵を勤める『曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ) 御所五郎蔵』、初役で踊る『高坏(たかつき)』の3演目が上演されます。

 

黙阿弥の魅力が詰まった『御所五郎蔵』

 「五代目菊五郎が大事にしていた演目」、と菊之助が切り出した『御所五郎蔵』。こんぴら歌舞伎で初めて五郎蔵を演じたときは、「黙阿弥の七五調のせりふ、言葉が洗練されていて、土右衛門、五郎蔵、その門弟や子分たちの掛け合いの面白さを感じました」。さらに、「胡弓入りの合方で見せる縁切り、立廻りをだんまりで合方に乗せてやる逢州殺し、そういう歌舞伎の代表的な場面、極まった場面をどのように美しく見せるか」、難しさと同時に楽しみにも感じながら演じたと言います。

 

菊之助が語る「松竹大歌舞伎」東コース

 先人が築いてきたものを継承し、「いかに黙阿弥の魅力を伝えることができるか」は、今回の公演でも大きなテーマとなります。

 

六世菊五郎がタップをとり入れた『高坏』

 『高坏』については、「六代目菊五郎がつくったものが上演されなくなっていたのを、十七代目の勘三郎のおじ様が復活、いまや人気演目になりました。十七代目のおじ様、十八代目のお兄さんがつくられた流れに乗って行きたい」と、菊之助は初役挑戦への意気込みを見せました。

 

 「アメリカでタップダンスが流行っていたことが、六代目のアンテナにひっかかり、宝塚歌劇団の方に歌詞を書いていただいてつくり上げた演目です。日本の舞踊にタップをとり入れるって六代目はすごいなと。また、狂言のもつふんわりとした雰囲気も大事で、桜庭の中でお酒を飲んで、浮かれながらタップを踏む難しさと面白さがあります。ほろ酔い機嫌で踏めるようになるまで、稽古を積んで臨みたい」

 

二つの熱い思い

 「五代目、六代目がつくり、熟成されてきたものを父が継承している。その音羽屋の芸を貪欲に継承していきたいという思いが強いです。同時に、女方もやってまいりましたので立役も女方も、やらなければよかった、と思われないように、一つひとつ、役になりきって勤めていきます」。父、菊五郎から直接教わる大切さを感じ、「父、先輩方にくらいつきつつ、息子にも厳しく、ときに温かく、芸を伝えていきたい」と、家の芸の継承に対する情熱を見せた菊之助。

 

 一方で、5年前の秋、一緒に全国を回るはずだった十世三津五郎がやむなく休演となり、図らずも一座を率いることになった菊之助には、再び一座の中心という立場で臨む今回の公演に対しても熱い思いがあります。「その土地の皆様にどうしたら歌舞伎の魅力を伝えられるか、気を配っていきたい」、いつもとは勝手が違う、それぞれ条件の異なる会場でも、「120%伝えられるような公演にしたいと思います」。三津五郎との特別な思い出にふれながら、菊之助は言葉に気持ちを込めました。

 「松竹大歌舞伎」東コースは6月30日(土)から7月31日(火)まで、25会場で開催。チケットの詳細は公演情報のお問い合わせ先でご確認ください。 

 

菊之助が語る「松竹大歌舞伎」東コース

 「松竹大歌舞伎」東コース 左より、安孫子正松竹株式会社副社長、尾上菊之助、松本辰明(公社)全国公立文化施設協会専務理事

2018/03/20