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仁左衛門が語る、歌舞伎座『絵本合法衢』

仁左衛門が語る、歌舞伎座『絵本合法衢』

 

 

 4月2日(月)に初日を迎える歌舞伎座百三十年「四月大歌舞伎」夜の部で、通し狂言『絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)』に出演する片岡仁左衛門が語りました。

台本を読んで役をつかまえる

 『絵本合法衢』は鶴屋南北が書き下ろした作品で、左枝大学之助と太平次、顔もよく似ているという設定の2役を演じ分けるのが眼目です。「台本をよく読んでその人物になりきって演じていると、自然に体がそうなっていく、という感じでしょうか」。仁左衛門は役づくりの工夫についてそう述べました。

 

 「役はつくるのではなく、自然と出てくるもの。若いときは違ったかもしれないけど、いつ頃からかそうなってきました」。芝居が終わり、あえて引いて見れば、「小回りの利く太平次に対して、大学之助は“ぼんぼん”」と違いを説明はできるけど、こういう違いがあるから演じ方をこう変えよう、声を使い分けようということはないと語りました。

 

仁左衛門が語る、歌舞伎座『絵本合法衢』

南北の役はすっと入ってくる

 一世一代と銘打たれた今回の公演。台本を読むたびに新しい発見がある、まだまだ完成ではないという仁左衛門に、忸怩たる思いがあることは否めません。しかしながら、「25日間、そつなく舞台を勤めるだけならまだまだできますけど、その日来てくださったお客様に、自分として恥ずかしくない舞台をと思うと」、これを最後にしようという気持ちになったと語りました。真摯な態度で役に向かう仁左衛門ならではの決意の表れです。

 

 「南北はその土地の匂いを出しています」。仁左衛門にとっては、「南北の役は、なぜかわからないけれど、すっと入ってくる」。歌舞伎座でも3月の『於染久松色読販』鬼門の喜兵衛、さかのぼれば『霊験亀山鉾』水右衛門、『盟三五大切』源五兵衛、『四谷怪談』伊右衛門、『桜姫東文章』権助と、南北が生み出した悪役を通し狂言でいくつも手がけています。「ひと口に市井の悪人といっても、それぞれタイプが違う。そこが演じていて面白い」。

 

悪の世界を楽しんでご覧いただけるように

 「とにかく、お客様に楽しんでいただかないといけない。現実では許されない悪の世界でも、お芝居の世界では魅力があります」。悪事を重ね、人を人とも思わず斬り捨てていく大学之助と太平次。ご覧いただくお客様に、観ていて楽しいと思ってもらえるよう工夫を重ねてきました。「太平次が死ぬ場面を書き加えたこともありましたが、(拵えの)間をつなぐところで延びてしまうので、それでやめて、大学之助のひと言で済ますようにもしました」。

 

仁左衛門が語る、歌舞伎座『絵本合法衢』

 取材翌日が仁左衛門の誕生日、一日早いお祝いに満面の笑顔!

 さらに、初の歌舞伎座での上演に当たっては、「劇場が広いので、そのぶん考えてやらないと。声も4階の一幕見席まで届かないといけない。相当な距離がありますから」とも。劇場に足を運んでくださるお客様のため、どこまでも役を追求し、芝居に全力で向かっていく姿勢を見せた仁左衛門の『絵本合法衢』。一世一代の大舞台が幕を開けるのはもう間もなくです。 

 歌舞伎座百三十年「四月大歌舞伎」は4月2日(月)から26日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2018/03/22