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菊五郎が語る『弁天娘女男白浪』

菊五郎が語る『弁天娘女男白浪』

 5月2日(水)から始まる歌舞伎座百三十年「團菊祭五月大歌舞伎」に出演の尾上菊五郎が、『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』について語りました。

初役から53

 夜の部の『弁天娘女男白浪』で菊五郎が演じるのは弁天小僧菊之助。丑之助から四代目菊之助を襲名した翌月、昭和40(1965)年6月東横ホールで初役を勤めたのが22歳でした。ビデオもない頃で、「自分もやりたいと思ってずっと父(の弁天小僧)を見ていました。その自分の“感じ”と、しっかり教わったことでやりました」。以来、菊五郎は当り役として数えきれないほど演じています。

 

 さかのぼれば、昭和29(1954)年12月には明治座の千穐楽で赤星として、十二世團十郎の弁天小僧、初世辰之助の南郷、楽善の日本駄右衛門らで、子どもの稲瀬川勢揃を見せています。「今と違ってご褒美をくれる時代じゃないし、記憶にありません」。同48(1973)年10月歌舞伎座の七代目菊五郎の襲名披露狂言では、「(十七世)羽左衛門のおじさんが南郷、紀尾井町(二世松緑)が駄右衛門、(十四世)勘弥さんが鳶頭。急に偉い人がいっぱい出て萎縮しちゃった」。

 

 これほど長く、深く、菊五郎がとり組んだ演目はありません。音羽屋にとって大切なこの『弁天娘女男白浪』で、「五代目(菊五郎)が残したもの、それは絶対に大事にしたい」と、今回、5年前の新開場柿葺落公演以来、新しくなった歌舞伎座で2度目の弁天小僧を勤めます。

 

菊五郎が語る『弁天娘女男白浪』

見て感じを覚えてもらう

 「十二世市川團十郎五年祭」でもある今回、十二世團十郎が何度も勤めた日本駄右衛門を海老蔵が勤め、「鳶頭は(六世)松助がやっていたから、松也にとか」、長く一つの役を演じてきた菊五郎だからこそ、重ねてきた歴史や思いが配役に限らず、舞台の隅々にまで表れます。その舞台に一緒に立つことで、「見て感じを覚えてもらえれば、一緒に演じたことを思い出してくれるでしょう」と、映像では残せないものを舞台を通じて残そうとしています。

 

 江戸なまり一つとっても、「歌舞伎の江戸っ子言葉でやってほしい。ただ“ひ”を“し”にして言われてもぞーっとしちゃう。昔の江戸っ子はそう言ったかもしれないけれど、歌舞伎でやる場合の発音はちょっと違う」。周りの人物の所作一つひとつが積み上がり、繊細なせりふ、演技のニュアンスがあってこそ、菊五郎の弁天小僧の舞台が生まれます。

 

「知らざぁ言って聞かせやしょう」

 弁天小僧は五世菊五郎が19歳で初演した役です。菊五郎は年を重ねて勤める今回、大屋根の立廻りもあり、なんといっても「知らざぁ言って聞かせやしょう」の名せりふを言うときの胡坐の姿勢がよくなくてはと、そして、傷を押さえながら体を伏せているときに「太っていると苦しいから」と、体重を落として体に磨きをかけています。

 

 「手順は何回もやらせていただいているんで」と、細かな動きは身体が覚えているという様子ですが、手順を間違えないことよりなにより、「せりふを言いながら、芝居しながら、小道具を“やっつける”のが難しい」と言います。「25日間を完璧にやりきるのは至難の業でございます」。やっぱりいろいろ勉強だな、とつぶやくように語った菊五郎。

 

 本外題に『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』とあるごとく、錦絵のような「目から入る美しさのようなもの。それがいちばん大事なんじゃないかなという気もします」。幕が開いてから降りるまで、一瞬たりとも目が離せない時間になりそうです。

 歌舞伎座百三十年「團菊祭五月大歌舞伎」は5月2日(水)から26日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で本日発売です。

2018/04/17