vol.2 歌舞伎って、お席?

幕間すずめ2

 席が変れば芝居の見え方も変ります。たとえば花道の出やひっこみ。「いかにその役らしさが出ているか」は登場の瞬間でわかると言われます。「シャリン!」という揚幕(花道奥の出入りに使う幕)を引く音と同時に役者を観られるのは、一階席ならでは。弁慶の飛び六法や熊谷の引っこみなどはもちろん、本舞台での演技も、臨場感をフルに味わえます。

 2階3階には「全体を見わたせる」良さが。たとえば「雪暮夜入谷畦道」。一面の雪景色の設定ですが、上から見下ろす形になるので、屋根の上や、おたずね者の主人公・直次郎の傘にまで雪がつもっているのがよく見え、ムードたっぷり。登場人物の置かれている状況や、関係性も一目でわかります。
 また「俊寛」では、さっきまで砂浜だったところが、廻り舞台の仕掛けで、みるみるまっ青な大海原に大変身。まるで大道具も芝居をしているように見えて迫力満点。

 親しい人とのとっておきの観劇やデートなら、桟敷席や枡席もおすすめ。前にテーブルがしつらえてあるのが、独特のリラックス効果を生み、プライベート感もバッチリ。髪結新三の台詞じゃないですが「粋な男(女?)になれますぜ」。

 そこまで親しくない場合は、歌舞伎座の幕見に誘うのはいかが。相手の心と財布に負担がかからず、「幕見席って実は音響効果もいいのよ~」などと何気につぶやけば、「通だな」と尊敬されるオマケまでついてくるかも。

■辻 和子(イラスト・文)
恋するKABUKI フリーイラストレーターとして出版・広告を中心に活動中。
 エキゾチックな味わいが持ち味だが、子供の頃より観続けている歌舞伎の知識を生かした和風の作品も得意とする。
 現在東京新聞土曜夕刊にて、歌舞伎のイラストつきガイド「幕の内外」を連載中。
 著書にファッションチェックつき歌舞伎ガイド「恋するKABUKI」(実業之日本社刊)がある。