皿屋敷

さらやしき

 "皿屋敷"といえば、"腰元のお菊が、家宝の十枚揃いの皿の一枚を割ってしまったため殿様に手討にされ、屋敷内の井戸に投げ捨てられた。以後、幽霊となって夜な夜な足りない皿の数を数える..."という、日本の幽霊話の中でも筆頭にあげられる有名なものです。
が、実際にその"皿屋敷"はどこの話かというと、諸説紛々で確定できるものはありません。
有名なものには、姫路城の中に今も残る<お菊井戸>にまつわる話(室町時代、姫路の太守小寺家を乗っ取らんとした家老青山鉄山の屋敷へ、お菊という女がスパイとして潜入したが身元が露見して鉄山に斬殺され井戸に投げ込まれた)や、尼ヶ崎の皿屋敷の話(城主の青山播磨守が侍女を殺して井戸に投げ入れた)、江戸の番町皿屋敷の話(旗本青山主膳が召し使っていたお菊に想いをかけたのを嫉妬した奥方が、家宝の皿を割ったお菊を折檻しお菊は井戸に身を投げてしまった)......などがあります。ほかにも日本各所に"皿屋敷"伝説はあるようです。

 人形浄瑠璃や歌舞伎でも、寛保元年(1741)大坂豊竹座で上演された人形浄瑠璃『播州皿屋敷』や文久3年市村座の歌舞伎『皿屋敷化粧姿視(さらやしきけしょうのすがたみ)』など、"お家騒動""殿のお手討""皿""井戸"といった要素を盛り込んだ様々な"皿屋敷もの"ができました。お家騒動は抜いて、若殿様と腰元の一途で凄絶なラブストーリーにしたてたのは大正5年(1916)初演の岡本綺堂作『番町皿屋敷』です。

 ≪魚屋宗五郎≫も本外題は『新皿屋舖月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)』といいます。通し狂言としてはあまり上演されることはありませんが、宗五郎の妹が奉公にあがった大名家のお家騒動に巻き込まれ、殿様に切り殺される...という"皿屋敷もの"の趣向を踏んでいますので"新皿屋敷"となっているのです。(み)


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