ヒーローからヒロインに

ひーろーからひろいんに

 歌舞伎には、人気狂言の題材をそのまま利用して別の狂言を作り出す作劇法があります。役名など先行作の世界をそのまま使い、時には趣向までも借りています。

 その一つに主役を女方に替えた狂言があります。豪力無双の鎌倉権五郎を女丈夫の巴御前に替えた『女暫』。美しい姫に迷って破戒する鳴神上人を、美男に迷う尼にした『女鳴神』。景清を女房の阿古屋に替えた『女景清』。

 『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』の団七九郎兵衛を女にした『女団七』。『切られ与三』のお富が蝙蝠(こうもり)の安蔵と強請(ゆすり)をする『切られお富』。『桜姫東文章』と同じ清玄桜姫ものの系統では、姫を坊主頭の尼にしてしまう『女清玄』。
 はては『忠臣蔵』の定九郎の女房が夫の敵をとろうと与市兵衛の寡婦おかやのもとへのりこむ『女定九郎』というものまで生まれています。(み)



解説

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