板付

いたつき

 幕が開いた時、すでに舞台上にいること(あるいはその役・人物)を「板付」といいます。

 「板」とはすなわち舞台のことで、多くの芝居の幕開きでは登場人物が板付になっています。特に、歌舞伎十八番の『暫(しばらく)』や『仮名手本忠臣蔵 大序』の幕開きでは、鶴岡八幡宮を背に大勢が居並び、ぜいたくで華やかな雰囲気が漂います。

 また世話物などでも、開幕後しばらくの間は板付の人物に通行人なども加わり、主要な人物が登場するまでのつなぎとして簡単なやり取りがあります。この人たちを「仕出し」と呼び、目立たない存在かもしれませんが、その場の状況説明や客席を含めた雰囲気作りなど案外重要な役割を担っています。

 さらに一般的にもよく使われる「板に付く」という言葉がありますが、この場合の板も舞台のこと。経験を積んで次第に様(さま)になってくることを指しますが、これも芝居から出た言葉です。(K)



解説

歌舞伎 今日のことば

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