定式幕

じょうしきまく

 歌舞伎の舞台で使われる三色の引幕を定式幕と呼びます。

 「定式」とは、「いつもの決まった形」という意味で、歌舞伎の幕内では良く使われる言葉です。大道具で「定式物」といえば、一定の形式の常備の大道具のことで、これらを組み合わせて、いろいろな場面の大道具を作り上げます。つまり「定式幕」とは「いつも使う幕」という意味から定着した呼称です。

 定式幕の起源は初代中村勘三郎が幕府の御用船「安宅丸(あたけまる)」の幕を拝領し、その配色を中村座の幕としたと伝えられていますが、その後、江戸三座と呼ばれた「中村座」「市村座」「森(守)田座」がそれぞれ違った幕を使用するようになりました。

 現在、歌舞伎座で使用されている定式幕は、左から「黒」「柿色」「萌葱(もえぎ=濃い緑色)」となっています。ちなみに国立劇場では「黒」「萌葱」「柿色」の並び、また中村座の「黒」「白」「柿色」は、平成中村座公演や中村勘三郎襲名披露興行で使用され、こちらもおなじみとなってきました。(K)

※定式幕については、これまで歌舞伎座の「黒・柿色・萌葱」の配色は森(守)田座を踏襲したもの、国立劇場の「黒・萌葱・柿色」の配色は市村座を踏襲したものと言われてきました。
 しかし最近になって、実はこれが事実誤認に基づいており、歌舞伎座の定式幕は市村座の、国立劇場の定式幕は森(守)田座のものと、本来の色順が同じであるとする学説が発表されています。
 詳しくは雑誌「歌舞伎 研究と批評 37号」所収、今尾哲也氏「<通説>を検証する」をご覧下さい。



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