鬘と床山

かつらととこやま

 俳優が役の扮装をするには衣裳と共に鬘が必需品です。歌舞伎では鬘屋と床山が分業になっており、鬘屋の仕事はまず俳優の頭の大きさや形に合わせた地金を整え、そこへ毛を植え込んだ状態に仕上げるところまでです。それを役に合わせて結い上げ、さらに日々の手入れと楽屋での掛け外しまでするのが床山です。

 演目と配役が決定すると、鬘屋と床山は俳優と打ち合わせて「鬘合せ」をします。銅板を叩いて丸みをつけた地金を頭の形に合わせて綿密に調整しますが、一ヶ月間毎日使用し、その仕上げ具合が演技に影響することもありますので大切な工程です。

 鬘に使われる毛の大半は人毛ですが、『鏡獅子』などの長い毛は「ヤク」という珍しいウシ科の動物の毛が使われています。

 鬘屋から地金を受け継いだ床山は、それぞれの役に合わせて結髪をします。同じような形に見えても役柄ひとつひとつに特徴があり、また俳優の意見も取り入れてその都度様々な工夫も加えられます。

 鬘は楽屋内では「あたま」と呼ばれることが多く、また「あたま」は「かぶる」よりも「掛ける」ということが多いようです。(K)



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