見立

みたて

 「仮名手本忠臣蔵 七段目 祇園一力茶屋の場」では、仲居たちが『さあさあ見立の始まり始まり』といって、お座敷での言葉遊びを始めます。見立とは、江戸時代に流行した絵画や言葉の上での洒落遊びで、何かを何かになぞらえる、つまり現代風にいえば「パロディ」といったところでしょう。いまでも芝居や浮世絵で見聞きすることが出来ますが、その時代の日本人の粋な洒落心が伺われます。

 「七段目」では仲居の一人が箸で斧九太夫の頭を挟み、『梅干なんぞはどうじゃいな』といってからかいますが、その他にも日替わりで役者が即興の機知を利かせる場面です。

 また芝居の幕切れなどで、富士山や鶴亀などおめでたいものを形取った見得をするのも見立の手法。役者絵の見立では、実際に上演されていない演目や配役を当てはめて空想の舞台を楽しむものや、人気役者達が初詣や夕涼み、花火見物などに集まる様子を似顔絵で描いたものなどがお馴染みです。(K)



解説

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