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東海道四谷怪談

とうかいどうよつやかいだん

 序幕浅草観音境内の場で響く「藤八、五文、奇妙!」という呼び声は、オランダ伝来で万病に効くという触れ込みの≪藤八五文(とうはちごもん)≫という売薬の売り立てです。この呪文のような言葉は、「長崎の岡村藤八の薬で、一粒五文※1、奇妙によく効く」というキャッチフレーズ。

 竹の子笠に紺絣の単衣(ひとえ)、手には<藤八五文薬>と書いた扇子を持って蛇の目紋をつけた薬箱を背負ったちょっと変わった格好の二人組が、向かいあって、一人が「藤八!」といえばもう一人が「五文!」、声をそろえて「奇妙!」と叫ぶのが面白かったようです。
江戸では文政8年(1825)に売りはじめましたが、すぐさま『東海道四谷怪談』(初演は同じく文政8年7月中村座)に取り入れられたため、あっという間に有名になりました。

 ところが、人気演目とはいっても『東海道四谷怪談』が通しで上演されることは明治以降もあまり無かったため、昭和24年(1949)8月大阪歌舞伎座でこの場を上演しようとしたときには、この「藤八五文」の風俗がどんなものだったかもはや覚えている人も無く、売り立ての呼び声だけは台本にあるのでわかるものの、実際どのように呼び立てるのか分からなくなっていました。そのとき直助役を演じたのは博学で知られた八代目坂東三津五郎でしたが、さまざま文献を調べ苦労したことが著書※2のなかに書かれています。(み)


※1 一説には十八(とう+はち⇒藤八)粒で五文ともいう。
※2 『歌舞伎 花と実』八代目坂東三津五郎著 玉川大学出版部 昭和51年



解説

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