酒呑童子

しゅてんどうじ

 日本に数多くいる妖怪のなかでも万人に知られた存在の≪鬼≫。
桃太郎の鬼退治などと並んで、有名なのがこの大江山に居たという酒呑童子です。

 一条天皇(在位986~1011年)のころ、都に鬼が出没し、多くの金銀財宝を奪い、娘たちをさらっていきました。高位高家の娘たちも次々行方不明になるに及び、帝は剛勇を謳われた源頼光を召しだし、鬼討伐を命じます。
源頼光は、配下の平井保昌や、四天王と呼ばれた渡辺綱、碓井貞光、卜部季武(末武)、坂田金時と鬼討伐の計画を練り、石清水八幡、住吉神社、熊野権現にそれぞれ分かれて祈念した後、山伏に変装して丹波と丹後の国境にある大江山へ潜入します。そこに鉄の御所という館を構え、大勢の眷属を従えていたのが酒呑童子という鬼の首領でした。
山中でさらわれてきた姫たちに出会った頼光一行は、鬼の館に客人としていりこみ、神々から授けられた≪神便鬼毒酒(じんべんきどくしゅ。神の意にかなったものが飲めば薬となり、鬼が飲めば毒となるという酒)≫を飲ませ、鬼たちが酔ったところをめでたく退治したことになっています。

 『御伽草子』には、頼光らが酒呑童子らの不審を招かぬように、童子に供された切ったばかりの人肉を肴に人の血の盃を干したことや、さらわれて来た姫たちの中にも悲惨な犠牲者が出ていたことなどが細かに書かれています。このあたりの描写はスプラッター映画さながらの凄まじさです。

 『戻橋』『茨木』に登場する茨木童子は、この酒呑童子の配下の鬼で、この頼光たちの襲撃の生き残りといわれています。(み)



解説

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