鷺娘の美しさ。
それは心の準備を全くしていなかった時に、
絶滅しゆく美しい命を目撃することに、似ている。
椎名林檎さんの感受性、生み出す言葉。そのひとつひとつが持つ美しさと背徳に、歌舞伎と通じるものを感じます。
富樫「椎名さんが初めて歌舞伎をご覧になったのは?」
椎名「22歳か23歳頃です。その前から気になってはいたんですけど」
富樫「初めて観て、どうでした?」
椎名「まさに坂東玉三郎さんの舞踊公演を拝見したのですが…とにかく圧倒されました。美しさや、その世界に。以来、しょっちゅう観に行くようになったんです」
富樫「歌舞伎って、古いものだという先入観もありますよね」
椎名「書いた人がすごく古かったりしますからね。でも身体を使って表現するからこそ新しくあり続けられるんだと思います。朽ちていかんとする生き物、人間が演じるわけですから、新しいクリエイションが生まれ続けている」
富樫「生き生きしてますよね。戯曲も古いのにカッコいい」
椎名「そう。黙阿弥さんなんて本当にカッコいい。台詞とか、言ってみたくなりますもん」
富樫「『三人吉三』の大川端の場なんて、辻褄合ってなくても音の感じ抜群だし」
椎名「そうそう!かっこいいギターリフとかと一緒なんですよね。スキャットとかシャウトとか。『どうやって出すのそれ!かっこいい』っていうのと同じノリでしょ。いちいちキマってる。」
富樫「でも、そこだけ単独上演、シングルカットしてるのはすごい」
椎名「そうなんですよね(笑)でも着うたとか、そういうことなんじゃない?」
富樫「内容もかなりエッジがきいたの多いですよね。『桜姫東文章』(※5)とか、お姫様から女郎に堕ちるって」
椎名「あの話はエロい。萌えですよ」
富樫「確かに!姫が女郎って、萌えですね」
刹那の輝きから眼を離さない。
強く、純粋な心で表現に対峙すること。
椎名林檎さんの芸に対する深い愛に触れ、身が引き締まりました。