『NINAGAWA 十二夜』の初演から5年の歳月が流れました。
ロンドン公演を経て、日本へ。
6月の公演で、菊之助さんが作品をより深く伝えるため凝らした工夫とは?
菊之助 「まずロンドン公演にあたり、もう一度シェイクスピアの原典に立ち返る作業をしました。初演、二演目で消化しきれなかった部分をより分かりやすくするためです。例えば、獅子丸が織笛姫と出会う場面・・・なぜ織笛姫は獅子丸を受け入れたのか?原作にはその状況を説明する台詞があるのですが、これまではカットしていたんです。今回はシェイクスピアの原作を尊重する意味でも、その台詞を加えていただきました」
富樫 「出会いの場面を語ることで、続くストーリーに流れる心情を理解しやすくなさったんですね」
菊之助 「そして今回は踊りの場面を、より劇的にしています。初演では琵琶姫の男女の踊り分け、二演目では左大臣と織笛姫の間に挟まれた琵琶姫の切ない恋心を踊りで表現してきました。今回は原作に忠実にしようかどうかと試行錯誤もあったのですが・・・」
シェイクスピアの原作では、踊りの場面の主役は道化が演じます。そこで今回は琵琶姫と道化の連れ舞いに、というプランも出たそうですが・・・
菊之助 「議論を重ねた結果、今回は積極的に女方の魅力を魅せていく舞踊を作り上げました」
女方の魅力。それは菊之助さんが『十二夜』を演じ続ける中で、より深く向き合うことになったテーマだと言います。
菊之助 「琵琶姫と獅子丸という男女を演じ分ける上で、歌舞伎が持つ力のひとつが俳優の『身体性』にあると強く感じました。男女の違いを身体で表現する『型』と今回は向き合っていきたいと思っています。型というのはそもそも、身体的な演出効果だけではなく、心の動きを表わすために生まれたものです。ですから型の意味を知ること、型をしっかりと演じることで、登場人物の心情をより深く伝えていきたい。そして今後も、歌舞伎が持つ劇性をしっかりつかみたいと思います」
富樫 「今後もさまざまな挑戦を?」
菊之助 「挑戦よりも継承、ということを今は意識しています。『十二夜』で素晴らしい挑戦をさせていただき感じたのは、今の自分にはまず芸の継承が必要だということです。より芸を磨くために努力したいと思います」
同じ400年前。海を隔てた土地で、生まれた歌舞伎とシェイクスピア。
そこに琵琶姫と主膳之助を重ねるのは、観客の考え過ぎでしょうか・・・。
「琵琶姫の心の動きをしっかりと伝えたい」
尾上菊之助さんの新たな想いと表現が注ぎ込まれる5年目の『NINAGAWA 十二夜』。
初演、二演目からの進化を楽しみにしながら、まずはシェイクスピアの原典をしっかりと読んでみたいと思いました。