インタビュー・文/富樫佳織、写真/伊藤康弘、構成/栄木恵子(編集部)

 赤や黄色といった鮮やかな原色が満ちている歌舞伎の舞台は、江戸の人々にとって日常のうさを晴らしてくれるエネルギー溢れる空間でした。
その美しさや、ひねりの利いたデザインを映し込むのが江戸千代紙です。
『藤娘』の帯に描かれた、藤の花と「ふじ」の文字を組み合わせたデザイン。『京鹿子娘道成寺』で白拍子花子が真っ赤な振袖に締める、黒字に丸紋の華やかな帯。勧進帳の弁慶が纏う着物の翁格子。千代紙の専門店は、歌舞伎好きの方なら胸躍るご存知のデザインでいっぱいです。

 歌舞伎衣裳さながらの色とデザインを和紙に映す。その技術は400年間、職人の手から手へと伝えられてきました。
 今回は、東京・湯島で江戸末期から千代紙づくりを続けている老舗、ゆしまの小林(おりがみ会館)の工房をご紹介します。館長で折り紙名人として知られる小林一夫さんのご案内で、伝承される染め技術をご紹介します。


江戸職人手帖

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