インタビュー・文/富樫佳織、写真/伊藤康弘、構成/栄木恵子(編集部)

 江戸時代、芝居小屋は最先端の情報がぎっしり詰まった流行発信源でした。
 町人文化が華開いた頃、舞台で役者が纏う衣裳をまねて縞模様の着物が日常のおしゃれ着となり、様々な文様、柄が生まれました。
 流行を取り入れた江戸時代のものづくり。当時の職人の手技は、現代にも生きています。江戸時代から続く長い歳月。人から人へと継承された技。江戸のデザインを通して、日本人が愛でてきた美に迫ります。

 毎年12月17日から19日まで、東京の浅草寺境内で行なわれる年末の風物詩が羽子板市です。新しい年を前に羽子板を買うのは「邪気を跳ね返す」というのが由来です。
 江戸押絵羽子板の起源は、江戸の文化・文政年間(1804〜1829年)頃と言われ、当時人気の歌舞伎役者を誂えたものが大流行しました。
 向島で江戸の技を今に残す羽子板の「鴻月(こうげつ)」さんを訪れ、芝居と羽子板の深い関係をお伺いしました。


江戸職人手帖

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