建て替えを前に、現在の歌舞伎座についての思い出を伺いました。
「現在の歌舞伎座は東京大空襲の後建て替えられ、昭和26年に興行を再開しました。私の初舞台が昭和28年ですから、これまでの俳優人生のほとんどが詰まった劇場です。歌舞伎の歴史の中でも、現在舞台に出ている先輩たちと僕たちの世代が一番、今の歌舞伎座とは付き合いが長いんですよ」
幼い頃に三階の大部屋で稽古をしたこと、青年期に楽屋で先輩に叱られたこと…。十二代目市川團十郎が芸に生き、芸と向き合ってきた時間を眺めてきた歌舞伎座。
「子供の頃は小道具の部屋が大好きでした。刀や十手とか、いろんなものがありますから楽しくって。そしてなによりも舞台からの眺めが大好きです。太い梁が渡された天井のデザインや、一階席の桟敷のバランス。この劇場に詰まっている歌舞伎の魂を、新たな歌舞伎座にも満たしていきたいと思っています」