歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



もっともっと楽しんでいただくために


「案外、愛嬌があるじゃない」

 右近さんの又平の初演は、平成19(2007)年10月の三越劇場でした。
 「ずっと演じたかった役でしたが、僕は師匠から愛嬌がないと言われ続けていました。又平は愛嬌が必要な役ですからね。それが『華果西遊記』(平成12年12月歌舞伎座)の孫悟空で師匠に“案外、愛嬌があるじゃない”と認めていただいた。そんなこともあって、念願の又平を初演できたのが、その三越歌舞伎の公演でした」

 初演されたときは、どんな感想をもたれましたか。
 「又平は朴訥なまでに純粋な人です。絵の道を志して土佐の名字を継ぎたいという一心で生きている。一心に役を極める、無心にその役を演じる――。役者の道とも共通するような気がします」

 猿翁さんにはどのように教わられたのでしょう。
 「初代猿翁さんのテープを聞いて覚えるようにと、師匠には言われました。ですが、初代猿翁さんは、まだ團子さんだった師匠に、踊りの指導の際に“そこに座って見ろ。ここで俺が踊るからその感じを取れ”と言われたそうです。それが澤瀉屋の教えです」

 そして、今回が3度目の又平です。
 「役柄の匂いや、雰囲気の感じを取る。だから音声だけでは想像しえない部分がありましたが、初代猿翁さんの又平の、音声から感じ取れる柔らかさと、一緒に出させていただいた師匠の又平の純粋無垢な気持ちを感じ取って、併せて表現できればと思います」

明治座 十一月花形歌舞伎

平成24年11月3日(土・祝)~
27日(火)
公演情報

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平成21年11月秋季公演
(C)松竹株式会社

昼の部
『傾城反魂香』

浮世又平後に土佐又平光起 右 近
女房おとく 笑 也
土佐将監光信 寿 猿
狩野雅楽之助 猿 弥
狩野四郎二郎元信 門之助

庶民に対する人生の応援歌

 音羽屋型(六代目尾上菊五郎)と澤瀉屋型との違いはどこでしょう。
 「師匠の又平は、初代猿翁さんと音羽屋との折衷型です。音羽屋型と違って又平は袴をはいていない。理由を聞いたことはありません。ただ師匠に言われたのは、この芝居は庶民に対する応援歌だということです」
 「人間は誰しもコンプレックスがある。又平の場合は吃音障害です。それを乗り越えて純粋に絵の道を求め、その一念が手水鉢に自画像として現れる。また、その奇瑞に感じた師匠が土佐の名字を許すという、ハッピーエンドの物語です」


 そこが、『傾城反魂香』という芝居の魅力だと…。
 「一念をもって頑張れば、庶民が大成功するという話です。だからこそ支持され、上演回数も多い。コンプレックス克服が、一般社会へのエールにもなっている。ですから、絵師として袴をはいているよりは、着流しでいるほうが、一庶民として大津絵を描いて生業にしている貧しい絵師、というのが表現されやすいのかなと」

 今回、猿翁さんからのアドバイスはありますか。
 「毎回師匠がおっしゃるのは、“女房までがあなどるか”のせりふを、子どもがお母さんに怒るみたいに言うようにと。そうしているつもりなのですが、三越歌舞伎の後の巡業(平成21年11月)でも言われました。“ダダこねているみたいにやるんだよ”と。今回は、そうご注意を受けないようにいたします(笑)」

 おとくは初役の笑也さんです。
 「笑也さんとも話していたんですが、又平おとくは、普段はとても明るい夫婦なのではないか。おとくが底抜けに明るい奥さんじゃないとね。そしてまた、又平が母性を芽生えさせてしまうような人なんじゃないですか」

※澤瀉屋の「瀉」のつくりは正しくは"わかんむり"です。

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